研究課題
バントゥー系アフリカ人とカラード(ケープタウン周辺の先住民、解放奴隷、「混血」の人々)の分断は、南アフリカにおいて被支配人種・民族がもっとも大がかりに分割された過程であり、問題は今日もなおつづいている。本研究では、これを20世紀前半期の左翼政治運動に遡って検討した。すなわち、体制側でなく反体制側による人種・民族の分断を探ったものである。左翼政治運動にはトロツキストも含まれるが、研究期間内は時間の制約もあり、より重要かつ、史料へのアクセスも容易な共産党に対象を限定した。また、以下の3点に絞り研究を進めた。a.共産党が1928年前後、指導者シドニー・バンティングらのもとでアフリカ人の民族解放闘争に特化していく過程の研究。b.同党が30年代後半、先述のAPO議長の娘シシ・グールを利用してカラードを組織化しようとするが、やがてそれを断念する過程の研究。c.今日の南アフリカにおける、20世紀前半期左翼政治運動の集合的記憶についての研究(グールを中心に)。以上の3点に関しては、これまでの研究とともに2018年、単著『異郷のイギリス』を刊行した。さらに1940年代以降、共産党はネルソン・マンデラなどANCの若手活動家と連携したが、2019年度にはマンデラの伝記的研究をおこなった。このように研究を進めることにより、19世紀末の分割統治から反アパルトヘイト運動にいたる具体的経緯が明らかになった。また、それと現在の政治状況の関係に関しても解明の手がかりが得られた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 図書 (1件)
Studies and Essays in History and Archaeology, Faculty of Letters, Kanazawa University
巻: 12 ページ: 29-40
歴史と経済
巻: 244 ページ: 64-66