本研究計画は4年計画の個人研究であり、その目的は、第二次世界大戦後にイギリスが世界各地で行った大規模な文書隠蔽工作の初期段階の展開を明らかにすることである。4年目にあたる今年度は、3年目に引き続き本研究計画にとって主要な史料である「移管文書群」の検討を進めながら、イギリス帝国による文書隠蔽工作の初期段階における実行過程を分析するというのが当初に定めた予定であった。 こうした当初目標については、今年度終了時までに一定の区切りをつけることが出来た。特に重要な舞台となったのは、セイロン(現在のスリランカ)とガーナであることが確認された。インドで何が起きたのか(あるいは起きなかったのか)など、まだ疑問が残る点もあるが、現在入手可能な史料から検討することについてはここで区切りとしたい。さらに、こうした作業を通じて、当初は想定していなかったこともいくつか見えてきた。特に、地中海の植民地マルタにおいて興味深い展開があったこと、それが現在のマルタの社会にも一定の影響を残している可能性があることが分かってきた。 このように概ね順調に進んできたが、同時に心残りとなってしまった点もある。それは、新型コロナウィルスの影響で今年度に限っては海外調査が出来なかったことである。幸い過年度に行ってきた調査の蓄積があったために今年度の目標を達成するという意味では大きな問題は発生しなかったが、本来であればさらに研究を加速出来たであろうということを考えると、残念ではある。 いずれにせよ、総括としては、新型コロナウィルスの影響という逆境の下ではあったが、当初の目的は概ね達成出来たと考えている。
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