現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トゥール司教グレゴリウスは、フランク人の起源の地を、ローマ属州名でパンノニアと証言している。これまで数多くの学者が、この事実について考察してきた。しかし、この事実は「フランク人」が言語の点で西ゲルマン語に属し、現在のオランダから北西ドイツとする見方と大きなズレが見られる。申請書はこのグレゴリウスの証言を踏まえて、パンノニア(現ハンガリー)が起源の地であるとする見解を支える歴史的根拠について、考察を深めてきた。その一端は昨春フランス語で著した論文Shoichi Sato,"《Fugit in Toringia, latita aliquatulum ibi》. Pourquoi Childeric 1er s'exila-t-il en Thuringe?, in Orbis Disciplinae. Hommages en l'honneur de Patrick Gautier Dalche, Brepols, 2017, pp.465-480として公刊した。本研究課題はこの論文が扱った時代を挟んで前後に時代的射程を拡大したものである。平成29年度の作業は、現在の歴史的フェーズの発端となった紀元前12世紀の、後期青銅器時代にあたる頃のシステム崩壊の時期からたどり、鉄器時時代後期からローマ時代初期にかけてを考察した。平成30年度は「ローマ時代の琥珀交易」へのゲルマン人の関わり合いを証言しているタキトゥスの言説を手掛かりに、ローマでの琥珀交易の拠点であったパンノニアに所在したCarnuntumについての考察と、琥珀交易で栄えた「テューリンゲン」を考察し、初期フランク史になぜこの二つの地域が登場するのかを解き明かしたいと考えている。
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