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2019 年度 実施状況報告書

ドイツ中世後期における多元的コミュニケーションと政治秩序

研究課題

研究課題/領域番号 17K03171
研究機関京都大学

研究代表者

服部 良久  京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (80122365)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードドイツ / 中世後期 / コミュニケーション / アソシエイション / ネットワーク / 紛争 / 儀礼 / 同盟
研究実績の概要

近年英国の歴史家が主張するドイツ中世後期の「アソシエイティブな政治文化」をふまえ14-15世紀ドイツの政治秩序を、政治エリートのアソシエイション(同盟、連合)というコミュニケーション行為から再解釈した。具体的には14世紀の帝国政治の中核地域における大小の都市同盟、貴族・諸侯の同盟、それらの相互の連合とネットワーク化、広域的なアソシエイションとしてのシュヴァーベン同盟(15世紀)の展開について、次の点を明らかにした。都市民、貴族、諸侯は地域、広域の平和と秩序、公共の福利(善)の回復、維持という利害・関心の共有により、身分を超えたコミュニケーションと協働が可能になったこと、同盟関係は度々「君主不在」の時期や地域で自律的に展開したこと、こうしたアソシエイティブなコミュニケーションが、君主権力から相対的な自律性を持ち、領邦の枠を越えて重層的に拡がり、政治社会の稠密化が促されたことである。その結果、中世後期のドイツは、領邦分裂、政治の法・制度化、集権国家形成の何れでもなく、エリートの多元的、重層的な同盟・連合と多様なコミュニケーション・ネットワークに支えられた、緩やかでポリセントリックなポリティとしての構造化が進んだとの暫定的な認識を得た。なお2019年9月には渡欧してダラム大学のL・スケイルズ、ゲッチンゲン大学のL・ヴォルフィンガーと意見交換を行い、予定した両者の招聘は事情により実現しなかったが、12月に京都大学において田口正樹、横川大輔両氏を招聘して行った研究集会では、上記の点に加え、カール4世という傑出した君主の統治スタイルについて紛争解決、政治的儀礼の意味、肖像やシンボルを用いたビジュアル・ポリシーの意義と限界などを議論し、中世後期の君主統治を政治文化とコミュニケーションから再解釈することをも試みた。最終年度として、以上の成果を全体として総括的に示すために、報告書を作成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度が最終年度であり、多元的なコミュニケーションの諸相の考察により、中世後期ドイツ(神聖ローマ帝国)の政治秩序を明らかにするという課題については暫定的ではあるが、一定の見通しを得ることができた。すなわち英仏の集権的、制度的国民国家という発展モデルを参照基準とせず、ある種の慣行、価値、規範を共有する政治エリートの多元的なコミュニケーション行為の絶えざるプロセスとして中世後期ドイツの政治秩序の「構造化」の過程を明らかにすることである。本課題により、中世後期とそれ以後のドイツ史を、逸脱、没落、衰退(分裂)という、目的論(国民国家形成)のネガ像から解放し、固有の歴史像を構築するためのファースト・ステップを示すことができた。但し、今年度予定していたイタリアの文書館調査を、covid19感染拡大のためにとりやめたので、13世紀と15世紀の神聖ローマ帝国とイタリア(シチリア、ナポリ王国、ロンバルディア、ヴェネチア)との関係という帝国のアルプス以南におよぶコミュニケーションについてはなお明らかにできなかった。

今後の研究の推進方策

最終年度からの繰り越しが認められたので、イタリア文書館調査を、2020年度中に行うことにより、最終年度としての課題を遂行したい。

次年度使用額が生じた理由

3月初めに史料調査のためイタリアに出張予定であったが、covid19感染拡大のために取りやめ、出張旅費を次年度に繰り越し、次年度に、当初予定していたイタリア文書館調査を行うこととした。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 中世後期ドイツにおけるコミュニケーションの諸相と政治秩序2020

    • 著者名/発表者名
      服部良久
    • 雑誌名

      服部良久編著『中世後期ドイツにおける多元的コミュニケーションと政治秩序』科研報告書

      巻: 1 ページ: 5-31

  • [学会発表] バルバロッサとベアトリクス―12世紀の皇帝夫婦―2019

    • 著者名/発表者名
      服部良久
    • 学会等名
      日本西洋史学会第69回大会
    • 招待講演
  • [図書] 中世のコミュニケーションと秩序―紛争・平和・儀礼―2020

    • 著者名/発表者名
      服部 良久
    • 総ページ数
      482
    • 出版者
      京都大学学術出版
    • ISBN
      978-4-8140-0251-1

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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