次の2点に、先行研究にはない、本研究独自の特色と独創性がある。(1)帝国管区の2つ機能との関連から、法曹の活動と異動が検討されることにより、従来の帝国国制史研究では充分に解明されていなかった、帝国の諸地域の帝国裁判への関与の在り方が、動態として明らかにされる。(2)この研究成果は、帝国と同様、諸地域の自律性を前提とした「複合的な国家編成」を取っていた、近世ヨーロッパ諸国や近世日本に対して、新たな比較研究の可能性を開くものと期待される。例えば、イングランドの治安判事、フランスの高等法院など、さらには近世日本の幕藩制裁判との間には、大なり小なりの差異があるが、そこから国家統合の比較が可能になる。
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