研究課題/領域番号 |
17K03181
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
細川 道久 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20209240)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニューファンドランド / カナダ / イギリス帝国 / アメリカ合衆国 / ドミニオン |
研究実績の概要 |
ニューファンドランドは、イギリス帝国最古の海外植民地として、大陸側のカナダとは異なる歩みをたどってきた。カナダが自治領(ドミニオン)となった1867年の連邦結成では、ニューファンドランドは代表を送ったが、加入を見送った。その後、断続的な交渉が続いたものの決裂した。1940年代に再開された交渉でようやく妥結し、1949年、カナダに加入した。 本研究は、ニューファンドランドがカナダに加入するまでの過程を、1940年代の妥結した交渉のみならず、それ以前の決裂した交渉をも視野に入れ、しかも、ニューファンドランドとカナダだけでなく、イギリスやアメリカ合衆国の動きも視野に入れることで、北大西洋世界の長期的な歴史的動態を考察することをめざしている。 2年目にあたる2018年度は、ニューファンドランド全般の歴史を概観した前年度の実績を踏まえたうえで、ニューファンドランドのカナダ加入をめぐる交渉のうち、決裂した交渉の一端を考察した。特に重点をおいたのは、ニューファンドランドを行政管理統治に導いた歴史的文書である『アムルリー報告書』(1933年)の検討である。同報告書を作成したアムルリー委員会が、ニューファンドランドの現状をどのように把握していたのか、そして、カナダへの加入を見送ったのは何ゆえなのか、について考察した。その結果、カナダ、イギリス双方の消極的な姿勢に加えて、ニューファンドランドとカナダの間にある根強い相互不信が、カナダ加入への大きな足かせであったことを確認した。これは、ニューファンドランドがカナダとは異なる歴史を歩んできたことを示した前年度の研究成果と合致するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、単訳書と共訳書の計3冊の刊行に多くの時間を割いたため、史料の収集・読解に十分な時間がかけられなかった。とはいえ、カナダの人権史を扱った単訳書も、グローバルな歴史を扱った共訳書も、分析の視角・視点や題材の選択が非常にユニークであり、本研究課題の研究遂行においてヒントが得られたことは、大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
ニューファンドランドのカナダ加入をめぐる交渉(決裂、妥結とも)について、前年度に引き続き、決裂した交渉に関する史料収集を実施する。特に、1895年の交渉について重点的に調査する予定である。
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