研究課題/領域番号 |
17K03181
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
細川 道久 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20209240)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニューファンドランド / カナダ / イギリス / アメリカ合衆国 / 北大西洋世界 |
研究実績の概要 |
本研究は、ニューファンドランドのカナダ編入が実現した第2次世界大戦以降の交渉のみならず、それに先立つ時代に行われ決裂した交渉をも検討することで、ニューファンドランド、イギリス、カナダ、アメリカ合衆国がどのような関係を切り結んでいたのかを考察し、北大西洋世界の歴史的動態を明らかにすることを目的としている。 前年度(2018年度)は、1933年の『アムルリー報告書』を分析した。その結果、カナダに対する根強い不信がニューファンドランド側にあったことが、カナダへの編入案の見送りにつながったものの、イギリスは、カナダがそれに向けた努力をすることを期待していた点を見出した。 これを受け、本年度(2019年度)は、それ以前の時期にカナダ編入をめぐってカナダとニューファンドランドが公式協議を行なった唯一の機会である1895年の交渉を考察した。交渉が決裂した最大の要因は、財政的に余裕のないカナダがニューファンドランドへの支援を拒否したことにあったが、そもそもカナダ編入案自体が、ニューファンドランドでは不人気であり、しかも同案が、同地の金融危機の打開策の最後の選択肢として出されたものであったことが、交渉を難航させる状況をつくっていた。さらにカナダは、ニューファンドランドとの統合によって「フランス海岸」問題を抱えることになり、それがカナダ社会の分裂を招きかねないとみていたことも、消極的姿勢の原因であった。他方、イギリスは、財政難を理由にニューファンドランドへの援助を拒んだが、カナダへの編入には前向きで、それをカナダに委ねる意向を示した。以上の考察の結果、1895年の交渉が行われたときの状況は、『アムルリー報告書』が出された1930年代とほぼ同じであったと結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、学内外の業務との日程調整がつかなかったため、カナダでの史料調査ができなかった。また、共著と共訳書の刊行に時間を割いたため、史料の収集・読解に十分な時間をかけられなかった。とはいえ、共著は、ニューファンドランドとカナダの関係を社会福祉の側面から考察する契機となった。内戦に関するグローバルヒストリーを描いた共訳書は、長期かつ広域の分析を実践しており、北大西洋世界の歴史的動態を考察する本研究に多大な示唆を与えた。いずれも大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
ニューファンドランドのカナダ編入をめぐる交渉(決裂、妥結とも)について、前年度に引き続き、決裂した交渉に関する史料収集を実施する。また、本研究と問題関心が重なる研究書が2019年に刊行されており、その検討も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、学内外の業務との日程調整がつかず、カナダでの史料調査を実施できなかったため、次年度使用額が生じる結果となった。この次年度使用額と翌年度分として請求した助成金を活用して、次年度は、カナダでの史料調査、関連文献の購入、国内での図書館での関連資料の収集調査にあてる予定である。
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