研究課題/領域番号 |
17K03181
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
細川 道久 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20209240)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニューファンドランド / カナダ / イギリス / アメリカ合衆国 / 北大西洋世界 / 連邦結成 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ニューファンドランドのカナダ編入について、それが実現した1940年代の交渉だけではなく、それ以前に行われ決裂に至った交渉についても検討することで、ニューファンドランド、カナダ、イギリス、アメリカ合衆国がいかなる関係を切り結んでいたのかを考察し、北大西洋世界の歴史的動態を明らかにすることを目的としている。 大航海時代以降のニューファンドランドの通史の概観(2017年度)、『アムルリー報告書』の分析を中心とした1930年代の状況分析(2018年度)、1895年のカナダ・ニューファンドランド間の交渉に焦点を当てた1890年代の考察(2019年度)を受けて、本年度(2020年度)は、さらに時代を遡り、1860年代に焦点を当てた。 1860年代は、カナダ自治領の創設、すなわち、「連邦結成」の協議がなされた時期であり、本年度の研究では、「連邦結成」をめぐる協議の全般的な流れを把握することから始めた。次いで、ケベック会議に焦点を当て、同会議で示されたニューファンドランドの処遇案とそれに対するニューファンドランド代表の意見表明を中心に検討した。コロナ禍ゆえにカナダでの調査が不可能となったため、公刊史料の分析に終始せざるを得なかったが、ケベック会議の討議内容を理解することができた。さらに、ケベック会議後のニューファンドランドについて、「連邦結成」に不支持の意見が強かった事情も見出すことができた。大陸側との統合にメリットはないとする意見が強いことは、1890年代と1930年代に関する前年度までの研究によって明らかにしていたが、今年度の調査によって、既に1860年代から同種の意見が優勢であったことを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、コロナ禍ゆえに、カナダでの史料調査が不可能になったため、公刊史料の収集・分析にとどめざるを得なかった。また、共著および翻訳書の刊行に時間を割いたため、史料の読解に十分な時間をかけられなかった。とはいえ、共著および翻訳書の刊行を通して、ニューファンドランドをグローバル・ヒストリーの中に位置づける研究視角・手法をブラッシュアップすることができたのは極めて有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、1860年代の分析を実施する。具体的には、ケベック会議後のニューファンドランド議会が「連邦結成」を見送った事情、1869年に行われたカナダとの「連邦編入」交渉の内容、同年の総選挙での「連邦編入」反対派の大勝を受けての「連邦編入」構想却下の事情、の3点である。なお、コロナ禍が続きカナダでの史料調査ができない場合は、公刊史料・インターネット公開史料の調査に切り替える予定である。 次いで、上記の1860年代の分析を、これまで実施してきた1890年代、1930年代、1940年代に関する研究成果と突き合わせ、北大西洋世界の長期的な歴史的動態を総合的に考察し、本研究を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって、当初予定していたカナダでの史料調査ができなかったため。次年度使用額は、カナダおよび国内の大学・図書館での史料調査にあてる予定である。なお、コロナ禍が続きカナダでの調査ができない場合は、国内の大学・図書館のみで調査を実施する。
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