研究課題/領域番号 |
17K03186
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
菊地 重仁 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80712562)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カロリング朝フランク王国 / 文書発給 / 威嚇 |
研究実績の概要 |
研究計画の2年目である平成30年度は、主として8・9世紀の証書史料についての調査を進めた。そのうち君主文書内部に見られる威嚇文言の分析から得られた成果を、研究代表者が主催したカロリング期のコミュニケーションに関する国際ワークショップにて報告した。8世紀までのフランク君主文書において威嚇の文言を盛り込んだ事例は極めて少なく、罰金設定を伴うものはインムニタス特権に関わる文書に限られる。こうした文書の登場と一時的消滅、さらには9世紀半ばにおける一般化までをより的確に理解するため、文書型式学的観点からの分析に加え、フランク君主の教会保護政策の進展やアドホックな権利授与から一般的立法行為への移行といった文脈の中への位置付けを試みた。この報告は、現在ブラッシュアップを進めており、計画3年目となる次年度中に論文として公にすることを目指している。 また教皇文書に見られる霊的威嚇(破門、神の怒り等)について得られた知見は、8・9世紀の教皇の権威が同時期のフランク王国において如何様に評価されていたのかを論じた英語論文(入稿済み)に組み込んだ。フランク君主による特権状発給との比較を行いつつ教皇による特権状ないし権利確認文書の発給のあり方を分析した同論文は、中世の教皇権を扱った論集に収録され、2019年度内にRoutledge社から出版される予定である。 また修道制と司牧の関係を主題とした国際シンポジウムにおいてカロリング期の事例について報告を行ったが、その準備過程において叙述史料の中に含まれる警醒的文言へ関心を向けることとなり、結果として本研究課題の進展にプラスとなったことを付言しておく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料調査の主要な対象を8・9世紀の私文書、君主文書、教皇文書とし、これらに含まれる威嚇条項のピックアップ、それぞれを比較しつつ分析を進めた。史料調査は完了していないものの、「研究実績の概要」欄に記したような成果が得られているため、5年計画の2年目としては概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き証書を含む各種史料の分析を行うほか、前年度に行った口頭報告原稿を補足・改稿し、論文として公にする。史料に見られる威嚇行為をより的確に解釈すべく、同時代の法文化、感情、宗教的心性に関する研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注していた書籍数冊の刊行が遅れ、納品されていないため。次年度中には刊行されると予想されるため、予算執行計画に変更はない。
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