研究課題/領域番号 |
17K03186
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
菊地 重仁 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80712562)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カロリング朝フランク王国 / 威嚇 / 文書発給 / 修道院 |
研究実績の概要 |
研究計画の3年目である令和元年度は、引き続き8・9世紀の証書史料についての調査を主として進めた。初期カロリング朝君主文書内部に見られる威嚇文言(威嚇条項、刑罰条項)を文書形式学的に分析し、カール大帝期のそれの特性を浮き彫りにした上で、インムニタス関連政策を素材に個々の証書における威嚇文言と広範な効力を持つべく制定された法令中の規定との関係性について考察した。この成果を論文としてまとめ、英文学術誌Spicilegiumにて公刊した。なお同論文の準備過程では、シュトゥットガルト大学中世史学講座およびベルリン自由大学古代末期・初期中世史学講座のワークショップにおいて研究報告を行った。その際、初期中世の私文書における威嚇文言についても論じた他(別途、論文準備中)、初期中世における「威嚇の作法」一般を考察するための見通しについても論じた。またドレスデン工科大学比較修道制研究所と連携した共同研究に参画し、カロリング期の修道院共同体における「合意」の概念及び実践の意義を考察した。同時代の修道規則注釈書の分析から始め、修道院内外での紛争抑止・解決の文脈において「合意を得たこと/合意がなされていないこと/同意を与えること」を示すレトリックが持ち得た言説上の意義を考察した。こうしたレトリックは、同時代における威嚇のあり方を考察する際にも注視すべき点であることが確認された。こうした考察の途中経過を、ドレスデンにおけるワークショップで報告したのち、英文の研究ノートとして所属機関の紀要に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
君主文書及び私文書における威嚇条項についての調査が順調に進み、研究成果を研究報告及び論文としてアウトプットすることもできている。威嚇条項以外の威嚇のかたちについても調査が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
公刊した論文内で予告した通り、後期カロリング朝君主の君主文書における威嚇条項、及び初期中世の私文書における威嚇条項に関する論文をそれぞれ仕上げ、投稿する。また威嚇条項以外の威嚇のかたちについての調査・分析をさらに進め、初期中世における「威嚇の作法」を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度において次年度使用額が発生した理由は、旅費使用がなかったためである。まずシュトゥットガルト大学での研究報告の際、招待講演となったため、旅費が先方から支給され、想定していた科研費からの支出はなかった。また2月以降ヨーロッパにおける新型コロナウイルス感染症流行の影響により、春季休暇中のヨーロッパ出張が不可能となってしまった。後者の出張については、社会状況を注視しつつ4年目内の実施を予定しているが、実現困難な可能性が高まった場合は、史料のデジタル・ファクシミリ版の作成を依頼するなどの形で史料調査の代替を試みる。
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