研究課題/領域番号 |
17K03186
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
菊地 重仁 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80712562)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | カロリング朝フランク王国 / 威嚇 / 文書発給 / 修道院 / 紛争解決 / 規律・統制 / 歴史叙述 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究は前年度の方向性を引き継ぐ形で行われた。まずメロヴィング朝・カロリング朝の王たちが命令文書において「恩恵」の剥奪に言及している事例を通覧し、これを命令の遵守を徹底するための工夫ととらえた上で、フランク諸王の統治における「威嚇」行為の意味を、命令伝達・執行という文脈の中で考察した。研究成果を論文にまとめて寄稿した論文集『ヨーロッパ中世の政治的結合体』が刊行された。 また「威嚇」認識を考察するための材料として引き続き「脅威」認識に関する事例の収集にも努めた。事例の一部はカロリング期における海・海上・海の向こうの世界に関する英語報告(於南カリフォルニア大学、オンライン)の中に盛り込んだ。同じく「脅威」に関わるテーマとして、修道者共同体が経験する「危機」についての研究も進めた。とりわけ、ある修道者共同体が、修道院内秩序の危機を克服し、秩序を脅かした存在への対処を進めていく中で、(修道院内部及び外部の)いかなる権威に依拠したのか、その際に共同体内部での合意形成がいかなる意味を持ったのかを、カロリング期フランク王国の事例を元に考察した。分析結果の一部は修道制における権威と合意形成をテーマにした国際研究集会において報告している(於ザグレブ大学、オンライン)。 しかし依然として新型コロナウイルス感染症が続く社会状況の中、昨年度に続きヨーロッパでの史資料調査や研究者たちとの協議討論を目的とした渡航を実施できず、計画申請当初の計画を完全には遂行することができなかった。そのため事業期間の延長を申請し、翌年度への延長が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では2021年度はプロジェクト最終年度となる予定であった。定期的に研究成果を論文ないし学会・研究会報告の形で公表できたという点ではおおむね順調と言える。しかし依然として新型コロナウイルス感染症が続く社会状況の中、昨年度に続き研究調査や協議を目的とした海外渡航を実施できず、計画申請当初の計画を完全には遂行することができなかった。そのため事業期間の延長を申請し、翌年度への延長が認められた。
|
今後の研究の推進方策 |
文書史料や法・規範史料以外の史料、とりわけ歴史叙述史料や書簡史料の分析に注力することで、より多角的に初期中世における「威嚇」の作法・機能を捉えることを目指す。また本報告書作成時の状況においては夏季休暇を利用した渡航が可能となる見込みが高いため、史資料調査や海外研究者との討議を実現することで、より多くの具体的個別事例の収集・分析を進めつつ、6年間の研究の総括に活かす。
|
次年度使用額が生じた理由 |
依然として新型コロナウイルス感染症が続く社会状況の中、昨年度に続き研究調査や協議を目的とした海外渡航を実施できず、計画申請当初の計画を完全には遂行することができなかったため次年度使用額が生じた。事業期間の延長を申請し、翌年度への延長が認められたので、夏季休暇を目処に渡航を実施し、予算を執行する予定である。
|