研究課題/領域番号 |
17K03188
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
野々瀬 浩司 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20545793)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宗教改革 / 都市 / スイス / 社会史 |
研究実績の概要 |
これまで研究代表者は、宗教改革期の社会思想と農村共同体に関する研究を行ってきたが、その成果を土台にして、今回は分析対象を16世紀の都市共同体へと拡大し、社会史的に都市と宗教改革の関係についての考察を開始した。まず、ドイツとスイスにおける都市の宗教改革研究に関する学説史を整理するために、「宗教改革と都市共同体:ベルント・メラー説をめぐって」(『思想』第1122号、2017年10月、24~45頁)を公刊し、メラーの学説の有効性と問題点について議論した。同年6月21日にキリスト教文化協会に依頼されて、「ルターの戦争観と現代」と題する講演を、教文館9階ホールで行った。さらに研究代表者は、「ヨーロッパ宗教改革研究の今日的意義 ―五百周年に寄せて―」と題するシンポジウムを慶應義塾大学三田キャンパスで開催することを企画し、ドイツ、フランス、イギリスの宗教改革を専門とする三人の講演者を招いて、2017年6月24日の三田史学会大会総合部会シンポジウムの総合司会をつとめた。その研究成果は、今年の夏頃に『史学』第88巻第1号に掲載される予定である。2017年8月にスイスのシャフハウゼン市にある州立文書館と市立文書館を訪問し、中世末から16世紀初めにかけての同市の史料、特に宗教改革史全般や1525年のブドウ栽培者の反乱に関わる史料を精力的に収集した。さらに、キリスト教史学会・東日本部会から依頼されて、研究代表者は2017年12月9日(土)に「ドイツにおける宗教改革と農村社会―ペーター・ブリックレの「共同体宗教改革論」をめぐって―」という講演を、明治学院大学白金キャンパスで行い、宗教改革の社会史研究において都市と農村の関係を考察する意義について議論した。その研究成果は、『キリスト教史学』第72集で今年の7月に公刊される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定されていたものとしては、学説史の整理を行って、研究をさらに進めるための重要な論点をまとめ、三田史学会大会において大規模なシンポジウムの開催を無事に実施し、スイスの二つの文書館を訪問して大量の史料を収集するなど順調に計画を進めることができた。また予定外ではあるが、依頼されて宗教改革に関連した二つの講演会を、2017年6月と12月に行った。そのことは、より幅広い視点で宗教改革史研究を総合的に考察するための重要な契機となり、本研究を進める上で、結果として有意義なものとなった。ただし、通信教育関係教科書の執筆や勤務校での多忙な業務におわれ、予定にないほどの多くの時間を、本研究以外の目的のために費やさざるをえなかったことは確かである。さらに詳細な史料分析を行う必要があるが、着実に研究成果を公刊することができているので、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年夏に収集した大量の史料を詳細に分析して、どのような史料が不足し、今後どのような史料を収集すべかについて検討する。その上で、まずシャフハウゼンにおける1525年のブドウ栽培者の反乱について分析し、それに関する学会報告を行い、その内容を研究成果として公刊する。さらにその研究蓄積をもとにして、シャフハウゼンの宗教改革の特質について考察する。特にシャフハウゼンでは、中心的な宗教指導者が不在のままに、外交的な圧力を受けて、市参事会によって宗教改革が導入されたという学説があるが、その有効性について検証する。それに加えて、宗教改革史や近世スイス史全般に関する重要な史料、研究文献、事典、辞書などを収集する。基本的に予定していた計画からの大幅な変更は必要ないと思われる。
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備考 |
2017年6月24日の三田史学会大会で「ヨーロッパ宗教改革研究の今日的意義―500周年に寄せて―」と題する総合部会シンポジウムの総合司会を担当した(慶應義塾大学三田キャンパスに於いて)。講演者と発表題名は、森田安一「ルター肖像画の変遷とルター改革の動向」、西川杉子「ルターを引き継いで ―17・18世紀プロテスタントたちの連携運動―」、田上雅徳「教会を持続させた宗教改革 ―政治思想史的考察―」。
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