2018年までに、宗教改革期における共同体運動に関する研究史を整理し、都市と農村の共同体の関係、共同体内部の階層間対立、宗教改革の神学と共同運動との関連性、市参事会と共同体の関係などの学術的な論点や課題を明らかにし、以下の二つの論文として公刊した。つまり、①「宗教改革と都市共同体―ベルント・メラー説をめぐって―」(『思想』第1122号、岩波書店、2017年9月26日、24-45頁)と②「ドイツにおける宗教改革と農村社会―ペーター・ブリックレの「共同体宗教改革論」をめぐって―」(『キリスト教史学』第72集、2018年7月、104-123頁)である。 そのような議論をもとにして、2017年と2019年に二度にわたってスイスのシャフハウゼン州立文書館を訪問し、史料収集を行った。そして、これまで収集した史料を分析した成果の一部を、二つの歴史関係の学会で、研究報告を行った。最初に、2019年5月19日に静岡大学に於いて「日本西洋史学会第69回大会近世史部会報告」で、「近世スイス・シャフハウゼンにおける葡萄栽培者ツンフトの反乱(1525年)について」という題名で報告し、宗教改革期の共同体運動の背景となるブドウ栽培者ツンフトの反乱という一つの出来事を考察し、大きな反響を得た。次に、2019年10月27日に広島大学東広島キャンパスに於いて「2019年度広島史学研究会大会西洋史部会第6報告」で、「近世スイス・シャフハウゼンにおけるアラーハイリゲン修道院の解散(1524年)について―宗教改革前史をめぐる一考察―」という題名で報告し、近世初頭における旧都市領主である教会権力と都市国家との関係に関する考察を行った。現在は、これらの研究成果をもとにして、学術論文を公刊するための準備を行っている状況にある。
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