研究実績の概要 |
2020年度はコロナ禍のために研究集会などを開くことは出来なかった。しかし、Zoom、メーリングリストやドロップボックスを活用し、研究分担者、協力者と、またフランスの研究者と緊密に連携して共同作業を続けることができた。その結果、グロッサリーの作成、鍵語彙の析出、日仏近世社会研究の基盤づくりを目標に掲げた本プロジェクトの目的は、基本的に完遂することができたと考える。 具体的には、プロジェクト・メンバー全員でファニー・コザンデ、ロベール・デシモン著の翻訳に取り組み、これを完成させた。本プロジェクトは、そもそも翻訳の問題発見機能に着目して構想されたものであり、実際、翻訳中に見出した鍵語彙(absolu,constitutuion,corps, office, moderneなど)について、幾度も議論を重ねた。メンバーはそれぞれ一つの鍵語彙を受け持ち、短い論考を執筆し、翻訳書に掲載した。ただし、当初予定していたグロッサリーについては、紙幅の関係上、完全な形で収録することは断念せざるをえず、インデックスをつけるに留めた。グロッサリーは、日本のフランス史研究に資するだけでなく、フランスの日本史研究にとっても有益であり、今後の比較研究の基盤となる。今後、発表を急ぎたい。また、2019年度に行った合宿の成果として、訳者解題を研究代表者である高澤がまとめた。これらの成果は、2021年4月9日に岩波書店から『フランス絶対主義--歴史と史学史』として刊行された。日本語世界で近世ヨーロッパ史を論じる上で、重要な仕事となると思われる。また、本プロジェクトを遂行したメンバーは、フランス絶対主義研究会という名称のもとに、今後も継続して研究協力を行うことになった。これも大きな成果である。コロナ禍のために国際ワークショップを行えなかった点は残念であるが、このプロジェクトを通して作られた緊密なネットワークは、今後の国際的研究協力の堅固な基盤になると考える。
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