研究課題/領域番号 |
17K03191
|
研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
松浦 義弘 成蹊大学, 文学部, 教授 (60229416)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ロベスピエール / ジャコバン独裁末期 / 世論 / パリ / 民衆の言説 / ロベスピエールの言説 |
研究実績の概要 |
本研究は、ロベスピエールの言説を検討するだけでなく、ロベスピエールの言説がとくにパリの民衆によってどう受け止められたのかを検討することによって、ロベスピエールの権力掌握と失墜の問題を新たな観点から解明することを目的とする。当該年度はとくに、これまで研究を遂行するなかでまだ十分に把握できていない、ジャコバン独裁末期のパリの「世論」(民衆の言説)に重点をおいた史料調査と分析をおこなうために、夏期休暇を利用して1ヶ月間ほど渡仏し、国立図書館や国立文書館を中心にしてこの作業をおこなった。当初の研究計画において予定していたように、共和暦2年プレリアル初頭(1794年5月末)のアドミラとセシル・ルノーによるロベスピエールとコロ・デルボワの殺害未遂事件に関する裁判・証言記録を重点的に調査・分析したが、この作業は完遂できなかった。 以上のような史料調査をおこなう一方、その成果をも踏まえながら、当該年度末には『ロベスピエール:世論を支配した革命家』(山川出版社)を刊行することができた。この著作は、ロベスピエールがその言論活動によって世論の圧倒的支持を獲得し、権力の座についた革命家だったという点に注目して、彼の生涯をたどった伝記的研究である。ロベスピエールは実際、何をどのように語ったのか。そして彼の言論は、革命期の人びとにどう受け止められたのだろうか。その点に光を当てて彼の生涯をたどった点に、ロベスピエールに関する他の伝記的研究とは異なる拙著の意義がある。また、そのようにロベスピエールの言論に焦点を当てて彼の生涯をたどることは、革命以来つねに賛否両論を巻き起こし、恐怖政治と結びつけられてきたロベスピエールとは何者なのか、という問いに部分的に応える試みでもある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】で述べたように、本年度は、1794年5月末のアドミラとセシル・ルノーによるロベスピエールとコロ・デルボワの殺害未遂事件に関する裁判・証言記録を重点的に調査・分析したが、この作業は完遂できなかった。しかし他方、年度内に特徴的なロベスピエール伝を刊行することができ、これは当初の研究計画においては想定されていなかった成果であった。以上を総合して考えれば、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると評価できよう。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、本年度の作業を継続するつもりである。平成30年度も、夏期、冬期、春期の各休暇を利用して延べ1ヶ月半ほど渡仏し、国立文書館に所蔵されている革命裁判所の裁判記録の蒐集と分析を継続したい。ただし、平成31年度の8月末には、日本と韓国のフランス革命研究者によるシンポジウムが日本で開催されることが決定しており、申請者もその主要な報告者となっている。このため平成31年度は、夏期に渡仏して史料調査をすることはほぼ不可能であり、本研究課題の進捗もかなり遅れることが予想される。夏期以外に渡仏して史料調査をしたり、シンポジウム後にできるだけ早く本研究課題に戻ることを心がけたりして、本研究課題の進捗の遅れが最小限に留まるように努めたい。
|