ロシアの茶の輸入ルート変化は、自ら清の市場に進出して製茶業に従事したロシア人企業家の活動と、ロシア市場のグローバル化が影響している。19世紀後半のロシアの茶貿易はユーラシア大陸を内外から包摂し、ロシア商人や多様なエスニシティが関与したことを本科研成果でも明らかにした。これは同地域でこれまで起こってきた政治紛争と異なる、民間商人のネットワークの存在を示している。本科研の意義は、従来政治・外交史視点で捉えられがちだった露清領帝国の経済的関係を民間商人、エスニシティという下からの視点で研究した点であり、現在も分析が難しいユーラシア大陸内部の流通問題に新しい知見を与えうると考える。
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