本研究の具体的目的は、弥生時代及び並行期における九州北部製の層灰岩製片刃石斧、北海道製の緑色片岩製石斧、北海道・東北北部製の三面石斧の流通及び当該期の西日本から北日本への鉄器流通の様相を明らかにすることである。 層灰岩製片刃石斧については福岡市埋蔵文化財センター、飯塚市歴史資料館、伊都国歴史博物館、九州大学アジア埋蔵文化財研究センター、行橋市教育委員会、北九州市埋蔵文化財調査室、小松市埋蔵文化財センターにおいて確認調査を実施し、その流通状況の把握に努めた。 緑色片岩製石斧と三面石斧については前年度に流通状況の確認は終了しているため、調査は実施しなかった。 鉄器は、北日本への流通の経由地と理解される北陸の事例について石川県立埋蔵文化財センター、石川県立歴史博物館、小松市埋蔵文化財センター、新潟市弥生の丘展示館で確認調査を実施した。また福島県内の鉄器にかかわる文献調査を福島県文化財センターで実施した。さらに鉄器の研磨・刃部再生にかかわる砥石のデジタル顕微鏡による使用痕調査を、愛知県教育委員会の原田幹氏とともに北斗市教育委員会、函館市教育委員会所蔵の当該期資料について実施し、研究の基礎的データを収集した。また伊達市教育委員会、市立函館博物館所蔵の当該期の骨角器について、鉄器による加工痕の確認調査を愛知県埋蔵文化財センターの川添和暁氏、北海道埋蔵文化財センターの福井淳一氏、鳥取県庁の河合章行氏とともに実施し、その蓋然性が極めて高い事例を複数確認した。
|