研究課題/領域番号 |
17K03206
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉井 秀夫 京都大学, 文学研究科, 教授 (90252410)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 考古学 / アジア考古学 / 朝鮮考古学 / 植民地 / 考古学史 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の3つの課題について研究を進めた。具体的な研究の進行状況は以下の通りである。 第1の課題は、今西龍旧蔵考古資料の整理である。本年度は、国立中央博物館所蔵の京畿道広州・船里出土文字瓦を実見する機会が与えられ、これまで推定してきた文字押捺方法や瓦製作技法の妥当性を確認すると共に、新たな知見を得ることができた。来年度に梨花女子大学校博物館所蔵品の調査をおこなった上で、総括的な論文を執筆することを予定している。 また本年度は、京都大学白眉センターの上峯篤史助教・金宇大助教の協力を受け、打製石器および金属器の実測・写真撮影を進めた。それに並行して、各遺物の由来についての文献調査を進めた。その結果、今西龍が収集した遺物の多くが、1900年代から1930年代初めにかけての日本および朝鮮考古学における研究進展と密接な関係をもつ、という見通しを立てることができた。 第2の課題は、植民地時代に作成された地形図を通した、朝鮮古蹟調査事業の検討である。本課題は、慶州文化遺産研究院からの依頼により、慶州周辺の地形図の資料収集を契機としてはじめたものである。慶州に関連する地形図の検討については、一定の成果を上げることができ、提出した論文はまもなく刊行される予定である。またこうした成果を元に、『朝鮮古蹟図譜』に掲載されている朝鮮各地の地形図の検討をはじめた。 第3の課題は、大韓民国の関係機関との対話である。今年度は、国立羅州博物館および国立中央博物館からの招聘を受け、朝鮮古蹟調査事業と現在の大韓民国の考古学の諸問題を結びつけるテーマについて講演し、参加者と意見交換をおこなった。また、在外所在文化財財団が新規プロジェクトとして立ち上げた日韓文化財研究フォーラムの日本側世話人となり、7月に東京芸術大学で開催された第1回フォーラムで報告し、韓国側の出席者との間でさまざまな討論をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今西龍旧蔵考古資料については、瓦類の整理研究に加えて、打製石器・金属器の本格的整理をはじめることができた。また、関連する文献資料の検討を通して、これらの考古資料の学術的価値に対する理解を深めることができた。韓国の関係機関・研究者との対話・共同作業については、日韓の研究者が互いに報告・議論しあうフォーラムをはじめることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今西龍旧蔵考古資料については、平成31年度に報告書を作成できるよう、整理作業を進めていきたい。諸事情から平成30年度には十分に進められなかった梅原末治旧蔵写真アルバムの整理は、平成31年度内には目録を完成させることを目指したい。日韓文化財フォーラムは、第2回を大韓民国扶余で開催すべく、準備を進めている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に従い研究費補助金を執行してきたが、昨年度中に刊行される予定であった論文掲載の報告書の刊行が遅れたため、その論文を印刷・配布するために準備していた費用を平成31年度に繰り越すこととした。論文が公表されれば、すぐに予定していた補助金の執行を進めたい。
|