研究課題/領域番号 |
17K03207
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
菊地 大樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (00612433)
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研究分担者 |
覚張 隆史 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (70749530)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 動物考古学 / 春秋戦国時代 / 馬匹生産体制 / 秦国 / 三次元計測 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国養馬史のなかでも目覚ましい発展をみせた紀元前5世紀~3世紀の春秋戦国時代における馬匹生産体制に焦点をあて、その形成過程を明らかにすることを目的とする。初年度は、閻家寨遺跡の分析結果を秦律の内容と照らし合わせながら、戦国時代秦国の馬匹生産像を検討した。これまで分析した西周時代馬の結果と比較すると、戦国時代の秦国では、馬の調教がはじまり労働力が増すようになると、野草を食む自然放牧から、粟や黍といった雑穀類が給餌される飼養形態へと移行するようになる。こうした馬匹生産体制は、萌芽段階にあたる西周時代よりも戦国時代の秦国では厳格に運営されていた実態が明らかになった。また、出生時と調教開始後で飼育地が移動している個体が確認できるなど、秦律の内容と符合する結果も認められ、歴史学では検証が難しかった秦国の具体的な馬匹生産体制像が提示できた。また、陝西省考古研究院と共に秦国の関連遺跡である神禾yuan(土偏に原)秦陵園遺跡出土馬の調査を進めるほか、河北省文物研究所と中国社会科学院考古研究所が共同発掘調査している、河北省行唐県故郡墓地車馬坑出土馬の分析調査を委託されたため実施した。神禾yuan(土偏に原)秦陵園遺跡では天子専用の六頭立て馬車が発見され、馬具には「左厩」という文字が確認されるなど、出土馬の性格が考古資料と出土文字資料の両面から検証可能となる貴重な資料となる。また故郡墓地遺跡は、春秋戦国時代の中山国との関連が想定されており、2017年中国考古六大新発見に選ばれるなど、現在、中国考古学界で最も注目されている遺跡のひとつであり、両遺跡から貴重なデータの収集ができた。秦国馬匹生産体制の研究成果については、広州で開催された「動物、植物与人-生物考古学術研討会」を含め国内外で発表した。このほか3D Bone Atlas Databaseを更新した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は秦国と楚国の資料調査データを積み上げて議論する計画であったが、これまでの実績が評価され、新たに中山国関連資料調査が可能となり、より重層的な議論に発展するデータ収集が出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き馬遺存体の調査を進めるとともに、研究成果を広く発信していく。
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