研究課題/領域番号 |
17K03213
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
飯塚 文枝 首都大学東京, 人文科学研究科, 客員研究員 (80744664)
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研究分担者 |
出穂 雅実 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (20552061)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 考古学 / 旧石器から縄文移行期 / 南九州 / 土器分析 / 石器分析 / 計量考古学 / 古環境分析 / 景観分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は南九州における後期旧石器から縄文時代早期にかけての行動組織と環境変化の分析から人類の新石器的生活の開始のタイミングを推測することである。具体的には土器の製作過程の分析と、石器の製作工程の再構築を視覚的分析と計量考古学的手法を用いて行い、定住度、移動のパターン、交換、および製作者の意図と変化を推定する。最終的にはそれらの技術的パターンと景観・古環境分析結果を合わせ、総合的に考察する。 本年度は研究目的達成のため、以下の研究を実施した。南九州に関し、(1)鹿児島県立埋蔵文化財センターを訪問し、中尾遺跡、向栫遺跡、伊敷遺跡、仁田尾中A・B、西丸尾遺跡、加治屋園遺跡、桐木遺跡の縄文草創期の土器技術の視覚的分析および実体顕微鏡を使った分析を行った。向栫城跡遺跡、西丸尾、および桐木遺跡については縄文時代早期土器の技術の基礎的データを得た。西丸尾遺跡および加治屋園遺跡については石器分析を行った。(2)鹿児島県西之表市教育委員会を訪問し、鬼ヶ野遺跡の縄文時代草創期土器および奥ノ仁田遺跡の縄文時代草創期・早期土器技術の基礎的なデータを得た。(3)南さつま市教育委員会(歴史交流館金峰)を訪問し、栫ノ原遺跡・志風頭遺跡の縄文草創期・早期土器技術の基礎的なデータを得た。 初期土器技術を東アジア・北東アジア全体の中で理解するため、(4)ロシア、チタ州立大学およびロシア科学アカデミーシベリア支部を訪問し、ウスチメンザ、ストゥデョノエ、ガーシャ遺跡出土土器遺物の基礎的データを得た。(5)米国ロサンゼルス、カリフォルニア大学およびカリフォルニア州立大学において、連携ラボと土器の分析の研究計画を立て、土器の計量科学分析の準備を始めた。(6)土器の鉱物分析を通した産地同定から定住度や移動度、交換の関係を探るため鹿児島県の縄文草創期土器の剥片を製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の実施計画では、首都大学東京や諸機関との調整の開始、南九州縄文草創期・早期の分析遺跡数を増やし、国内で試料調査をすること、ロシアで遺物試料調査を行うこと、土器の剥片製作、ミズーリ大学で土器化学分析、学会発表などを行うことであり、これらについては5で述べたとおりおおむね実行することができた。米国ミズーリ大学を通した土器化学分析は、研究協力者との打合せの結果、次年度行う予定に変更になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、鹿児島県および宮崎県の後期旧石器、縄文草創期・早期の遺跡数および遺物数を増やし分析すること、また原材料の調達・分析をし、土器・石器技術の変異性の理解を深め、定住度と移動度、および生産と流通の関係を解明する研究に着手する予定である。首都大学東京、および連携関係にある日本や米国の諸大学のラボと研究者の協力を得て、土器、原材料の剥片分析、土器成形方法や物性、放射化分析を継続的に行っていく。さらに、国内の古環境学の専門家と協力し、南九州古環境や景観分析も開始する予定である。東北や北海道などの日本国内および中国南東部の初期の土器の基礎的な資料調査も行う予定である。これらの結果を国内外で発表し、論文にしていく計画である。国際学会にて新石器化のプロセスや土器の起源に関するセッションを持つ予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度が平成29年度~31年度の科研費使用年度初年度だったため。
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