研究課題
本研究の主な目的は南九州における後期旧石器から縄文時代草創期・早期移行期の石器・土器技術の変化から行動組織の変化を推測し、それを古環境・遺跡の立地の変化の種類およびタイミングと比較することにより、行動変化の理由を探ることである。土器技術に関しては、製作過程を再構築することから、生産・流通のパターン、南九州内での技術的変異性を推測する。本年度は研究目的達成のため、以下の研究を行った。(1)土器技術の専門家であるアリゾナ大学物質科学科のパメラ・バンディバー教授と共に、鹿児島県立埋蔵文化財センターを訪問し、中尾、仁田尾中A・B、桐木、および三角山I遺跡の土器技術の視覚的分析および実体顕微鏡観察を行い、昨年度までの分析結果に対し、新たな視点や批評を得た。(2)同教授とともに、西之表市教育委員会を訪問し、鬼ヶ野・奥ノ仁田遺跡の土器遺物に関し同様の分析を行った。(3)南九州の縄文時代草創期土器との比較のため、同教授とともに、東京都埋蔵文化財センターに収蔵の多摩ニュータウン遺跡出土の縄文時代草創期土器分析を行った。(4)九州地域の縄文時代移行期の石器に詳しい博士に協力を依頼し、鬼ヶ野、奥ノ仁田および三角山I遺跡の石器分析を行った。(5)土器薄片分析をカリフォルニア大学およびカリフォルニア州立大学において行った。(6)2019年7月開催予定の国際第四紀連合アイルランド大会においてユーラシアにおける土器の起源に関するセッションを組織する準備を行った。(7)土器放射化分析資料をミズーリ大学に提出した。(1)の結果はアメリカ考古学学会において発表し、その内容は研究紀要・縄文の森から第11号に提出した。また、本年度の結果を含むこれまでの研究成果のうち、東アジア・北東アジアにおける土器の起源に関する考察はUISPP学会パリ大会で発表し、その内容を国際ジャーナル『パレオアメリカ』に投稿、掲載された。
2: おおむね順調に進展している
理由:平成30年度実施計画では、(1)報告書に記載されているデータの分析およびデータベース化、(2)研究会議や関連諸機関との必要な調整、調査報告書などの資料購入、(3)首都大学東京での分析、北海道教育大学での土器のマイクロアナライザー資料分析、(4)鹿児島県諸機関での資料分析、(5)国内の南九州以外の地域でのデータ収集、(6)東アジアでの資料調査、(7)海面変動および植生の専門家との協議、(8)カリフォルニア州立大学での土器分析、(9)国際学会での発表が予定されており、おおむね遂行することができた。北海道教育大学でのマイクロアナライザー分析は試料準備に時間を要したため、次年度行うこととした。
今後は、引き続き、南九州の諸機関において収蔵資料分析を行うとともに、土器の計量考古学分析に重点を置き、国際学会での成果の発表、市民向けの講演会、国際ジャーナルおよび国内雑誌への論文投稿を行う。各種分析データを統合し、総合的モデルの作成を目指す。
旅費が予定していた額より少なく済んだため。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 5件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 11件、 招待講演 5件)
研究紀要・年報 縄文の森から
巻: 11 ページ: 印刷中
PaleoAmerica
巻: 4(4) ページ: 267-324
10.1080/20555563.2018.1563406
Studia Archaeologica Instituti Historiae Et Archaeologici Academiae Scientiarum Mongolici
巻: XXXVII ページ: 5-16
鹿児島考古
巻: 48 ページ: 61-80
論集忍路子
巻: V ページ: 35-57
Archaeological Research in Asia
巻: N/A ページ: N/A
DOI:10.1016/j.ara.2018.03.001
巻: 4 ページ: 134-150
DOI: 10.1080/20555563.2018.1457392
DOI:10.1016/j.ara.2018.09.003
DOI:10.1016/jara.2018.10.003
日本考古学
巻: 47 ページ: 121-134