研究課題/領域番号 |
17K03216
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
堤 隆 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (70593953)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神子柴系石器群 / 神子柴論争 / 局部磨製石斧 / 大形尖頭器 / 旧石器-縄文移行期 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、最終氷期末の日本列島に展開した神子柴系石器群の生成とその性格の考究である。研究最終年度は令和2年度であったが、新型コロナウイルス問題により研究出張や対面での研究集会等が実施できないため以下の2点に研究を絞った。なお1年の期間延長の了解を得て令和3年度が研究最終年度となった。 1:研究成果の発表では次の論文など数本を投稿した。 The emergence and transmission of early pottery in the Late-Glacial Japan( Quaternary International誌)、「神子柴論争」(『旧石器研究への視座』 1)、「神子柴遺跡と石小屋洞穴」(『別冊季刊考古学』32)、「痕跡研究と機能論的アプローチ」(『季刊考古学』153)。 2:研究課題を整理する研究図書の出版。『季刊考古学』153号(2020年10月刊)で特集「神子柴系石器群とは何か」を堤隆の編集により組んだ。冒頭、「神子柴ディスコード」と題し堤がその総論を述べ、以下の内容で14名の研究者が議論を展開した。「スケールダウン・イノベーションと神子柴文化」、「神子柴遺跡の位置」、「神子柴文化を考える」、「神子柴型石斧について」、「本州中央部における更新世末の大形両面加工尖頭器」、「痕跡研究と機能論的アプローチ」、「石材石器技術学からみた槍先形尖頭器の製作技術」、「両面調整の尖頭器製作と円盤状石核」、「神子柴系石器群の利用石材」、「北海道における神子柴石器群並行期とその前後」、「西日本の神子柴系石器群」、「神子柴石器群の生成〈出自〉と展開」、「晩氷期の東日本における古植生の地理的分布」、「神子柴系石器群における遺跡形成過程」、「神子柴遺跡の時代」が論題で、研究者のみならず一般も手にする『季刊考古学』誌で幅広く研究の意義や課題を周知できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初の平成29年から令和2年の当初まで、研究は順調に推移してきた。しかし、令和2年2月頃からの新型コロナウイルス感染症の蔓延により、令和2年度は研究出張や研究集会が実施できなかった。やむなく、最終年度を1年延ばす措置を了承いただいたところである。それもふまえ、以下に研究の進捗状況を示す。 神子柴系石器群の生成を探り、性格を考究するうえで欠かせないのが詳細な石器群の属性のデータベースである。現在、当該石器群の主たる分布域である東日本のデータベース構築はその基礎作業をほぼ終え、西日本側のデータベース構築作業を実施中である。 一方、多様な問題点を議論するため、初年度より毎年シンポジウムを設けてきた。平成29年度が『神子柴系石器群とは何か』、平成30年度が『神子柴系石器群:その存在と影響』、令和元年度が『Hunting:狩猟相解明のためのアプローチ』である。 神子柴系石器群では東北地方の珪質頁岩の中部・関東地方への動きが、人びとの直接的移動や集団間接触を考える大きなカギになる。そうした意味において、令和元年度に実施した珪質頁岩の主要産地である山形県域の原産地踏査は、石材資源の産出状況を把握する上での成果となり、遺跡出土の珪質頁岩製石器のあり方とのよい対比材料ともなった。 令和2年度は、The emergence and transmission of early pottery in the Late-Glacial Japan( Quaternary International誌)ほか数本の論文を執筆、研究の課題点を『季刊考古学』153号(令和2年10月刊)の特集「神子柴系石器群とは何か」を堤(研究代表者)の編集により組んだ。 新型コロナウイルス感染症による番狂わせを別にすれば、上記の点において、研究は内容的にもスケジュール的にもおおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの猛威により、一年延長とした令和3年度が、本研究の最終年度となるが、その研究の目的である最終氷期末の日本列島に展開した神子柴系石器群の生成とその性格についての解明のため、これまで計画にしたがって以下の方策で研究を推進する。特に最終年度として研究成果を以下に総括的に提示したい。 なお、新型コロナウイルスの猛威により、引き続き調査出張や研究集会の開催が不可能であることもふまえたうえで、実現可能な研究成果の総括を行いたい。 ①:神子柴系石器群の生成プロセスを明らかにするため、その前段階の細石刃石器群および、神子柴系石器群に後発する草創期石器群のあり方(石器形態・石器組成・石材構成・製作技術)、遺跡のあり方(立地、環境等)を関東・中部地方を中心に検討し、その連続性・非連続性を考察する。あわせてそれ以外の地域の当該石器群のあり方も注視する。 ②:神子柴系石器群の遺跡性格にかかわる問題として、遺跡形成過程論・石器の使用痕跡論・石器の来歴分析の観点から、これまで進めてきた議論や論考を総括する。 ③:初年度から行っている日本列島における神子柴系石器群の集成を器種組成や石材組成も含めて引き続き行い、データベースを完成させる。あわせて英文データベースの整備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、研究最終年度であったが、新型コロナウイルスの猛威により、研究出張がままならず、また、対面での研究集会やシンポジウム等が実施できず、直接経費の支出はなかった。 研究最終年度が、令和3年度に延長となったため、直接経費を手つかずで繰り越し、次年度使用とした。 使用計画であるが、経費は、データベース整備、研究報告の発刊、また、新型コロナウイルスによる影響がなければ、研究出張や研究集会も様子を見て実施したい。
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