研究課題/領域番号 |
17K03222
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
小田木 治太郎 天理大学, 文学部, 教授 (90441435)
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研究分担者 |
廣川 守 公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 副館長 (30565586)
菊地 大樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (00612433)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 長城地帯 / 春秋・戦国・秦・漢 / 金銀器 / 青銅器 / 蛍光X線分析 / フォトスキャン / 白家湾 / 忻州窯子 |
研究実績の概要 |
本研究では、長城地帯の金銀器・青銅器を型式学的調査と蛍光X線分析を用いて詳細に調べ、製作技術や材料について検討し、遊牧文化と農耕文化(戦国・秦漢)との交流を明らかにすることを基底的な目的とする。平成29年度の研究計画では主なものとして、①「中国における資料調査とそのデータ整理」、②「比較資料の調査」、③「基礎的データの収集・整理」の3項目をあげた。とりわけ①が本研究の中心的活動である。 ①では研究代表者・研究分担者のほか、内蒙古自治区文物考古研究所の曹建恩(所長、研究館員)・索秀芬(研究館員)、内蒙古博物院の李少兵(研究館員)が研究協力者に加わり、作業を進めた。調査対象は収蔵状況などを考慮して当初計画から一部変更し、内蒙古自治区文物考古研究所が収蔵する、白家湾遺跡出土品11件、忻州窯子墓地出土品117件、水泉墓地出土品8件を調査した。調査方法は観察と写真撮影・実測からなる型式学的方法および蛍光X線分析を主とし、SfM-MVSによる三次元解析も取り入れた。 ②は国内収蔵資料が対象であり、京都大学総合博物館や永青文庫などで資料調査を行った。③は主に第三者による調査報告書や刊行物から必要データを抽出することであり、中国青銅器全集のデータ化などを行った。また、2013・2014年に寧夏回族自治区で調査し、さらなる検討の余地が残っていたデータの検討を進めた。これらは来年度に体裁を整え、考察を加えて、研究報告書として刊行できる見込みである。 研究成果の発表としては、アジア鋳造技術史学会2017台北大会で口頭発表「中国北方青銅器文化の金銀器の製作技術(Manufacturing Technique of Gold Artifacts of the Northern Chinese Bronze Culture)」を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も重視し、最も多くの研究費を費やす、中国における資料調査(上記①)では、重要遺跡で出土した十分な数の資料を調査でき、多くのデータを得ることができた。調査対象には当初、阿魯柴登出土品・桃紅巴拉墓出土品なども希望していたが、内蒙古自治区創設70周年記念展に出品されたため叶わなかった。ただし、実際に調査した忻州窯子墓地出土品は、比較的新しい発掘による資料的価値の高い一群であり、当初予定と甲乙つけがたい成果を得たと考えている。 国内における比較資料の調査(上記②)、データの収集・整理(上記③)も一定の成果を上げた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究活動の構成は、平成29年度と基本的に同じである。最も重要な中国での資料調査については、中国側の研究協力者および彼らが所属する研究機関とも良好な関係を発展させている。中国での調査資料は、カク県窯子墓地・毛慶溝墓地出土品を希望している。これらは内蒙古中南部涼城地域の北方青銅器文化を明らかにした基本資料であり、これらの様相を明らかにすることは意義が大きい。ただし、展覧会に出品されるなどの理由で調査できない可能性はいずれの資料にもあるので、状況に応じ、最適の資料を選定することとしたい。 日本国内の活動は、国内資料の調査とデータの整理が主である。とくに今年度に中国で調査したデータの整理を進め、その成果を学会発表につなげたい。また、寧夏回族自治区の資料に関する報告書を刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
寧夏回族自治区資料の検討の成果が当初見込みより大きくなり、平成30年度に報告書を刊行するのがより意義深いと考えるに至った。そのため、今年度の研究経費の支出を抑制し、次年度使用額を生じさせた。よって、今年度に生じた次年度使用額は来年度に当該報告書を刊行する費用として使用する計画である。
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