研究課題/領域番号 |
17K03229
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研究機関 | 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部 |
研究代表者 |
菊池 百里子 (阿部百里子) 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 総合情報発信センター, 研究員 (50445615)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ベトナム / ゲアン / ハティン / ゲティン / 考古学 / 朱印船 / 陶磁器 / 日越交流 |
研究実績の概要 |
2017年8月に、ベトナムのハンノム院研究者と共同で、17世紀に日本人女性が嫁いだハティン在住の阮家に伝わる家譜の調査を開始した。10月には、日本の水中考古学専門家らとともにハティン省沿海部を船で踏査し、沈没船や遺物の分布状況を調査した。この調査により、一隻の沈没船の存在を確認することができ、今後の調査についてベトナム側と協議した。またゲティン地域では、17世紀以降キリスト教の布教が盛んであり、沿岸部の教会の分布調査も実施した。 研究成果の公表では、2017年5月に日本考古学協会総会において調査研究成果を発表した。この発表がきっかけとなり、読売新聞朝刊の文化欄に研究成果を紹介する特集記事が掲載された。また、6月にはベトナムで開催されたInternational Conference; Central Vietnam's Trading System in Maritime Silk Road Roles and Connectionsにおいても、共同研究者らと連名で調査研究成果を発表した。このほか、学術雑誌2誌に論文が掲載された。 ベトナム北中部のゲティン地域には、17世紀に朱印船がたびたび寄港し交易活動を行っており、本研究は、当該地域の考古学調査や関連史資料の総合的な調査研究により、17世紀の日本人商人の活動を考察するものである。本年度は、特に日本関連史資料について専門家との共同研究体制を構築し、学際的な研究へと発展させる基礎的な研究を実施した。 本研究は、朱印船へ商品を供給していた東南アジア大陸部東西回廊による交易の様相を解明するもので、ベトナム史、日本近世史、日越交流史などの各研究に新展開をもたらすとともに、クローバル・ヒストリー研究にも貢献する意義を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ベトナム北中部のゲティン地域の考古学調査や関連史資料の総合的な調査研究により、17世紀の日本人商人の活動を考察するものである。本年度は、特に日本関連史資料について日本、ベトナム双方の専門家らとの国際共同研究体制を構築するための基礎的な調査、研究事業を行った。特に、ベトナム側からの要請に応じて実施した水中考古学調査では、新たな沈没船を確認し、さらなる研究の発展に資する発見となった。 また、日本の学会や国際シンポジウムでの発表、学術誌への掲載など、計画より多くの研究成果公表を行うことができた。その結果、読売新聞の特集記事として大きく取り上げられたほか、シンクタンクの広報誌の巻頭言として研究成果を社会に還元することができ、多くの反響を得た。 さらにベトナムでの調査においては、現地テレビ局からの取材や撮影があり、日本とベトナムの交流の歴史や国際的な共同調査の様子、成果をベトナムの市民にも発信することができた。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ハティン省内における発掘調査や本格的な整理作業(注記および写真撮影、代表的な遺物の実測など)を現地にて実施し、日本において遺構、遺物写真の整理を行い、報告書として公開する。 またゲティン地域で発見された日本関連史資料(家譜や武器など)の調査も実施し、発掘成果とも合わせて、近世の日越交流史について総合的に分析・考察する。 研究成果の公表では、国際的研究会議での発表や英語での図書の出版も予定しており、国際発信を積極的に実施していく。
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