研究課題/領域番号 |
17K03232
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
野口 淳 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (70308063)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 先史学 / 考古学 / 形態測定学 / 三次元計測 / 旧石器時代 / 石器技術 / 形態分析 |
研究実績の概要 |
1)石器の高精度・効率的な三次元計測手法の確立 市販の卓上型レーザースキャナ、研究協力者による自主開発レーザースキャナによる考古資料・実験資料の計測を実施した。前者は資料の収蔵管理機関・施設に出向いての計測、後者は借用許可を得た複数資料の計測に適している。測定誤差や特性の差異は、研究目的達成のための分析実施には影響がないことを検証した。写真計測(SfM/MVS)については自動回転台と動画撮影を組み合わせた方法の基礎を検討した。 2)考古学資料・実験資料の計測 秋田市教育委員会、福島市教育委員会、岩宿博物館、埼玉県三芳町教育委員会、東京都埋蔵文化財センター、府中市郷土の森博物館、小金井市教育委員会、東村山市教育委員会、富山県朝日町まいぶんKANの協力を得て、考古資料の計測を実施した。とくに秋田市教育委員会には、接合資料を中心とした数百点の借用・計測の許可をいただいた。これにより昨年度に実施した実験製作資料との比較検討のための考古資料の集中的な計測を実施した。 3)考古学的研究に資する示標の探索・分析手法の確立 計測データの解析・分析手法について研究協力者との検討会を重ね、統計解析用プログラム言語Rによる石器形態解析プログラムを構築した。その成果を含め、考古資料の形態分析の手法に関する研究会を、横浜市歴史博物館との共催により「考古形態測定学ワークショップ」として一般公開で実施した。 4)三次元データの解析と考古学的議論 研究計画と成果について、国際学会発表2件、国内学会発表20件、論文18本の論文等を執筆公表した。石器の三次元計測と解析の手法を拡張援用するかたちで共通する方法論にもとづき土器の三次元計測と解析も実施し、国内学会発表1件、論文1本を公表した。また写真計測の実用化・普及に向けた研究者・実務家向けのワークショップを、横浜市歴史博物館、大阪府立弥生文化博物館で実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
考古学資料の調査・三次元計測はほぼ予定通りに進捗した。年度前半は計測を集中的に実施し、後半から計測結果の解析を進めている。示標の探索・解析手法の確立については予定通り進捗し、解析プログラムの構築に至った。同プログラムを利用した計測結果の解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
1)石器の高精度・効率的な三次元計測手法の確立 レーザースキャナによる計測については精度・効率ともに現状可能な範囲で最適化されている。計測手法の一般化・普及化を視野に入れ、写真計測の効率化・洗練化に取り組む。 2)考古学資料・実験資料の計測 2017~18年度の計測とその解析結果をふまえて、追加的な対象資料を選定、計測を実施する。 3)考古学的研究に資する示標の探索・分析手法の確立 2018年度に構築したプログラムにもとづき、計測結果の解析を進め、必要に応じた機能追加・拡張を行なう。 4)三次元データの解析と考古学的議論 科研プロジェクト内での討論とともに、「考古形態測定学研究会」を定期的に開催、議論を深めより有効な方法論の確立を進める。国際学会、国内学会複数件の発表を行ない、論文等を執筆公表する。また2019年9月に開催予定の第4回考古学・人類学のための形態測定学国際会議を共同主催し、国内外の関連研究の発表と議論の場を設ける。あわせて関連分野の専門家を海外(イギリス、アメリカ、オーストラリア)より招聘しシンポジウム、ワークショップを開催する。また今後の共同研究体制の確立のため、オーストラリアを訪問する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究集会(第1回考古形態測定学ワークショップ)の開催にあたり当初の2018年度所要額を超過することが判明したため、概算で200,000円を前倒し請求した。精算額との間で48,797円の差額が生じた。
|