研究実績の概要 |
本年度は基礎的統計資料として,市区町村単位で産業小分類の従業者数を入手することが可能な『経済センサス』(2009年および2016年)を用いて,中部圏の関連多様性指標の算出を試みた.その結果,関連多様性と非関連多様性がともに高い値を示すのは,名古屋市の中川区,守山区,中区や春日井市のほか,金沢市や福井市などがあげられる.このような市区では特定の産業に偏らず多様な産業中分類の業種がみられ,さらに産業小分類レベルでも豊富な業種にわかれている.一方,豊田市や田原市では産業中分類レベルで輸送用機械器具への強い特化を示しており ,産業小分類では自動車・同附属品製造業が卓越していることから,関連多様性と非関連多様性はともに低い値を示した.長野県北部や富山県東部,愛知県北東部,三重県南部などは製造業企業の立地が乏しく,製造業従業者数が1,000人未満であることから,多様性を表す指標はともに非常に低い値を示した.一方,豊田市や田原市のようにトヨタ自動車の主力工場が立地する都市では,製造業従業者数を相当の規模有していても多様性指標が低くなる場合もあった. 隣接する市区町村で多様性指標の類似性が高いことが確認できたことから,ArcGISにより空間的自己相関分析を試みたところ,関連多様性に関してはモラン統計量(Moran’s I) が0.272を,また非関連多様性のモラン統計量は0.241を示すことから,ある特定の地域の多様性が高くなると,周辺地域の多様性も高くなる傾向にあることが示唆される.また2009年の中部圏の市区町村における関連多様性と非関連多様性に対して,空間的自己相関分析を実施したところ,モラン統計量はそれぞれ0.270および0.240となり,2009年と2016年の間で横ばいであり,多様性の空間的パターンにおいて類似傾向に変化がみられないことが明らかになった.
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