本研究の目的は、近年の山村地域の社会経済にみられる特徴的な広域性・流動性現象が広く山村地域一般でみられるのか、そこにどのような地域性があるのかを明らかにすることである。そこで、東北地方(福島県会津地方)と紀伊半島(三重県南部)を対象として、東西日本の比較の視点から本研究テーマを考察してきた。 令和4年度の実績としては、まず三重県山村に関する文献調査を行った。尾鷲市立図書館と熊野市立図書館を訪問して、三重県南部地域(東紀州地域)の地域史、社会経済、民俗文化などに関する文献を閲覧し、研究を進めた。特に地域密着の図書館が所蔵しているローカルな記念誌や雑誌を利用できたのは有効であった。 そして、福島県会津地方と三重県東紀州地域の関係機関においてこれまで収集してきた各種資料(地図資料や電話帳データ、その他の資料など)を整理し分析を行った。両地域における離村の状況、村落社会の縮小、家屋・土地利用の変化などを整理し、比較の視点から考察を進めた。 本研究プロジェクトは、当初は平成29年度から平成31年度までの3年間の計画であった。その後、研究期間を1年延長し、さらにコロナ禍に伴う特例措置により2回延長したので、結局、計6年間の研究プロジェクトになった。その研究成果の全体をまとめると、第一に、統計データの分析により、三重県山村と福島県会津地方山村にみられる人口、世帯数、産業構成、農業経営などの変容を明らかにすることができた。第二に、両地域の現地調査で得られた各種資料や関係機関での聞き取り調査結果より、現代の山村社会の構成がどのように流動化しているのか、住民生活がどのように広域化しているのかについて、それらの現状と地域特性(東西日本の差異)を把握することができた。
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