本研究の目的は,初等・中等社会系教科地理的分野において,公共空間のデザイン力および公共空間のマネジメント力の形成を通して,児童・生徒の主権者としての資質・能力を育成するための単元構成および具体的な授業開発を行い,その有効性を明らかにしようとするものである。 昨年度実施できなかった調査を今年度は文献調査に切り替えた。特に,イングランドと台湾の地理テキストブックや防災教育テキストブックを分析対象として,まちづくりについての調査を行った。また,まちを様々なスケールに位置づけるための研究として,流域思考と防災まちづくりに着目し,文献研究を行った。社会科におけるまちづくり学習の研究動向の整理を受け,社会科におけるまちづくり学習を,まちづくりの担い手を育成するために,自分自身が暮らしているまちを対象とし,まちに起こっている課題を他の地域や,より大きなスケールと関連づけながら認識し,自らが主導してハードとソフトの両面から総合的なまちづくり実践を行う学習と位置づけ,中学校社会科地理的分野におけるまちづくり学習の実践を開発することとした。 中学校社会科地理的分野の最終単元である「地域の在り方」に位置づけて,「猪名川サスティナブルデザインプロジェクト」に関する実践を開発した。生徒が居住する地域を,より大きなスケールである「流域」という単位の一部と位置づけ,猪名川の景観を守りつつどのようなまちづくりが可能なのかについて,まちづくりの提案を行う学習である。そこでは,サスティナブルな地域環境デザインの作法と技法を参考にして,「川づくりサスティナブルデザインのフレームワーク」を開発し,それに基づき猪名川を取り巻く自然の仕組み,猪名川の治水への取組み,猪名川をとりまく社会の仕組みを踏まえて提案する文理架橋型の単元案を「社会科PBL的単元構成」に基づいて開発した。
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