今年度はデータベース(以下DBと記す)の完成を目指し、現地調査はこれまでに実施できなかった九州地方(筑前・筑後・肥後・薩摩)、中部地方(越前・若狭・尾張・美濃・参河・遠江・甲斐)のほか近畿地方(但馬・播磨・丹後・大和等)の諸地域の国及び県指定史跡を中心に主要な古墳について継続して、立地(地形を中心に交通条件等についても適宜加味)と現況について調査するとともにGPSにより地理座標を取得し、収集した資料からデータを整理してDBに入力した。 また、2名の研究協力者の多大なる協力を得て、以前構築していたWeb‐GIS版前方後円墳DBを円墳、方墳を含めた表示に改良するために、前記の時期区分や立地の類型区分をはじめ墳丘の規模表示等に関して、これまでに収集したデータをもとに全体的な整理と再検討を行い、データ項目とデータの整理・修正を行った。その結果、成果発信用のWeb-GIS版古墳DBでは時期区分について古墳時代の前期・中期・後期の3期区分を基本とすることとした。 構築した暫定版DBをもとに若干の具体的検討を試みた。円墳および方墳等では史跡指定を受けた古墳を中心にデータ収集の対象を限定したことによって、対象古墳に若干のバイアスがあると思われるので解釈には注意を要するが、立地をみると、全時期を通じて全墳形では山地・丘陵の頂部や尾根の先端部といった比較的標高の高い地点への立地が約52%を占め、時期別では前期でそれが約70%を占め、中期には約47%、後期以降には約42%と低下し、平地への進出が窺える。これを円墳についてみると、対象数の少ない前期では約73%、中期は約72%、後期以降は約62%と低下する。前方後円墳で台地端部や台地面に立地するのが中期に約30%、後期以降に約40%となるのに対して、円墳では中期以降で約25%にとどまっているなど興味深い知見が得られ、DB活用の有用性が示唆された。
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