研究実績の概要 |
今年度も研究成果の整理を継続して行い、ネットワーク成長モデルの精緻化と現実データへの適用可能性について検討した。具体的には、過去の文献や資料・データから復元した都市の規模別配置と流動データに対してネットワーク成長モデルを適用し、得られた結果と仮想データセットへの適用結果との比較を行った。その結果、スモールワールド・ネットワークおよびスケールフリー・ネットワークが現れる空間的配置や都市規模の条件を明らかにすることができた。今年度は、企業間取引データを取得するため、データ提供元である(株)帝国データバンクと相談し、対象とする業種の選定と対象企業、取引先の選定を行なった。本社所在地に基づく層化ランダム抽出を行なった結果、予算内で取得可能なデータとして、17,634社の企業、26,470件の取引件数を選定し購入した。具体的な内訳は、業種別で企業数が卸売業5,244件、総合工事1,227件、職別工事783件などの60業種、地域別で東京都4,526件、大阪府1,984件、愛知県1,090件などのように、業種間で偏りがなく、また、都市規模に応じて企業数が抽出されたデータ構成となっている。企業の分布と取引関係をみると、東京への一極集中傾向が読み取れることと、取引先として大企業に集中する傾向があることがわかった。すなわち、企業間取引に関しては、スケールフリー・ネットワークの特徴が顕著に表れているといえる。しかし、データの選定作業に時間がかかったことやデータ購入の時期が遅れたこともあり、企業間取引からみた都市間結合関係の分析やネットワーク成長モデルの適用までは十分に実施できなかった。また、購入したデータは予算の都合上、全体の企業間取引のごく一部であり、本格的な分析はデータの補充を待つ必要がある。
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