研究課題/領域番号 |
17K03249
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
山神 達也 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (00399750)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域人口 / 人口減少社会 / 労働力人口 / 非労働力人口 / 労働力状態の地図 / 地方創生 / 田園回帰 |
研究実績の概要 |
人口減少期に突入した日本社会では、労働力人口の確保や各種社会活動の担い手として、出産・子育て期に離職した女性や定年退職後の高齢者など、非労働力人口に注目すべき状況が生じてきた。本研究では、労働力状態からみる日本の居住地域構造を解明することと、非労働力人口の増減の要因を定量的に検証することを目的とする。 令和2年度(2020)は、近年注目を集めている田園回帰現象との関わりから、地域人口の変容過程についての成果を得た。まず、1920年から2015年までの三重県を対象に、旧市町村(平成の合併前)を分析単位として、人口変化の空間的プロセスを検討し、都市化の進展の過程を明らかにするとともに、都市から農山村への人口移動の増加の意義を示した。また、和歌山県下の旧市町村(平成の合併前)を対象として、2050年までの将来人口を推計し、田園回帰現象の有する意義を整理した。これらの成果はいずれも、筒井一伸編『田園回帰がひらく新しい都市農山村関係―現場から理論まで―』(ナカニシヤ出版、2021年)に掲載されている。 以上は、地域人口の現況および将来像を示す重要な研究成果であるものの、地域人口の労働力状態にまで踏み込んだものではなく、その点に焦点を当てた研究は、コロナ禍の影響を受け、不十分なものにとどまった。ただし、労働力状態に関わる文献研究を進めるとともに、労働力状態からみる居住地域構造を検証するための分析手法の検討を進めてきたことから、再度、研究期間の延長を行い、「今後の研究の推進方策」に示した計画で研究を進め、労働力状態の地域構造に関わる研究成果を上げていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
以下の事由により、研究環境が整わず、また業務が多忙化したことで、研究に遅延を生じた。(1)建物の改修工事に伴い研究室の転居を3回行った。(2)平成30年度(2018)秋に本学で全国規模の学会(日本地理学会)を開催し、その運営に多くの時間を割いた。(3)学内外で多くのエフォートを要す委員に就任したため、それらの業務に忙殺された。加えて、コロナ禍により、オンライン授業の準備などに予想以上に時間を取られるとともに、(3)の業務が多忙化を極めたため、令和2年度(2020)は研究の進展は限定的なものにとどまった。以上の状況を踏まえ、研究期間を再度延長した。この延長期間で、本研究課題についての十分な成果を得られるよう努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、(1)「年齢」と「労働力状態」とその「不詳」の地図化、(2)労働力状態の各項目の地図化、(3)労働力状態からみる居住地域構造、(4)労働力状態の空間解析、(5)労働力状態からみる人口変化の要因分析、について研究を進める計画である。 当初の計画に照らすと、これまでに(1)・(2)とともに、田園回帰現象の観点から地域人口の変容過程についての研究成果を得た。期間延長により最終年度となる令和3年度(2021)では、(3)~(5)の研究を進める。まず、7月末までを目途に、和歌山県紀ノ川筋の市町村を対象として、人口変化の要因を労働力状態の変化から検討する(5)。次いで、10月末までを目途に、近畿地方全体を対象として、労働力状態を変数とする多変量解析を行うことで、居住地域構造を抽出する(3)とともに、特徴的な属性についての空間解析を行う(4)。 以上において、(5)は2021年度秋に学会発表を行うとともに、『紀州経済史文化史研究所紀要』に投稿する予定である。また、(3)・(4)の成果は、2021年度3月に学会発表を行うとともに、その成果を論文にまとめるが、投稿先は未定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】コロナ禍の影響を受け、学生アルバイトの補助や旅費を中心として、研究費を計画に沿って使用することが困難であった。
【使用計画】研究資料の整理やデータの入力・チェックなどで人件費・謝金を使用する。また、学会発表で旅費を使用するほか、地域人口関連の書籍やプリンタのトナーなどの物品費などで使用する。
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