本研究の目的は、高度経済成長期に誕生した計画空間である郊外空間の変容と住民の実践をジェンダーの視点から明らかにすることである。固定的な性別役割分業のもとに展開されてきた郊外空間での生活や価値基準は、少子高齢化やグローバル化などの変化とともに終焉を迎えつつある。本研究では、引き続き男性たちの実践に注目することで、郊外空間の変容の一側面を捉えることにある。 2019年度は、前年度より行っている大阪府豊中市を対象として、父親たちによるPTA活動、地域社会での自治的活動、そして子育て支援活動への参加などを取り上げ、彼らの活動実践を分析・検討した。前年度に続き、多大な協力を得ながら当該地域でのフィールドワークを行った。インタビューの協力者はいずれも働き盛りの男性であり、彼らは学校問題やNPO、任意団体の子育て活動に意欲的に参加し、地域の新たな構成員となっていることが明らかになってきた。一方で、2019年度の成果は、とりわけ、地域という場に生産活動の論理を持ち込むという彼らの活動の「課題」を考察できたことである。このことは、ジェンダーの視点導入により初めて浮き彫りにできたことであると考えている。 加えて2019年度は、外国人労働者が増加する群馬県伊勢崎市に暮らすオールドカマー、ニューカマーのベトナム人、彼/彼女たちの支援者を対象に、外国人労働者の定住化とホスト社会との関係性の構築過程について分析・検討した。インタビューの協力者は、おもに「生活者」として当該地域に暮らし、子どもを育てる(育てた)父親、母親、そして彼らを支援する前橋・伊勢崎地域の施設、教会、彼らの集住する団地の住民である。行政の機能は欠かせないが、地方都市における外国人労働者の受け入れ現場は、(国の施策と、実際の彼/彼女たちの貢献とは裏腹に)民間のボランティアや善意に委ねられていると考えられる。
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