研究課題/領域番号 |
17K03252
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
両角 政彦 都留文科大学, 教養学部, 准教授 (80508739)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グローバル化 / 市場構造 / 集約型農業 / ネットワーク化 / 中規模経営体 / 経営分化 / 知的財産権 / 育成者権 |
研究実績の概要 |
本研究は,グローバル経済下における知識創造型農業の典型である花き産業の国家間・産地間・生産者間のネットワーク化について,産地組織・農業経営による新品種開発,種苗調達,製品の生産・販売過程の成立条件に着目して明らかにするものである。 30年度は,主として29年度の現地調査結果の学会発表および論文作成と,市場構造と知的財産権(育成者権)に関する分析結果の論文作成を行なった。 前者では,北海道斜里郡小清水町のユリ生産を事例として,産地組織と農業経営の変化について追跡調査をもとに分析し,生産からの撤退要因と生産の社会経済的意味を明らかにした。大規模畑作地域における中規模経営体は,成長戦略として導入した集約型農業のユリ生産から20年余りを経て撤退し経営分化してきた。その主要因は価格要因と組織的要因にあった。生産の歴史は自らの地域に対して良好なイメージを付与する知的資産をもたらしたことが推察された。 後者では,ユリの球根と切花の市場構造と知的財産権(育成者権)の関係性に着目し,主に統計データをもとに時間的・空間的な変化から明らかにした。ユリ球根の輸入規制の緩和措置は,日本国内の市場規模を一旦は大幅に拡大させることにつながった。切花生産者は,国内の他産地や産地内の限られた球根調達ネットワークから解放され,経済的効果を享受してきた。その一方で,国内における新品種開発と育成者権の取得行動は停滞または縮小し,知識,技術,経験が失われてきた。これは,産地内で形成されてきたネットワークや社会関係資本,さらに品種開発を行なう意志や意欲にまで影響を及ぼした可能性を指摘できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
30年度の研究計画では,現地調査を実施する予定であったが,近年の花き産業の急激な変化を踏まえて,29年度に行なった現地調査結果を論文に取りまとめる必要性が生じた。また,市場構造の変動に関する統計データを分析する必要性も生じたため論文執筆を優先した。 本年度の研究成果として,下記の「研究発表」に挙げた成果のほかに,「大規模畑作地域における集約型農業の導入と転換―北海道小清水町のユリ生産を事例に―」と「農産物輸入規制緩和にともなう市場構造と知的財産権の変化―ユリ球根の育成者権をめぐって―」と題する2編の論文を学術雑誌に投稿しており,加筆・修正中である。また,埼玉県,新潟県,長野県の各産地についても調査・研究を進めている。 なお,29年度末より研究者に健康上の問題が生じていることから,現地調査が予定より遅れていることを付記する。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は主に高知県における現地調査を,また令和2年度は鹿児島県における現地調査をそれぞれ予定し,全国的なユリ産地の動態を明らかにする計画である。現地調査の内容は,主として産地内の流通資本・流通組織による種苗の調達・供給構造とネットワーク化,製品生産者である切花生産者の経営状況,集出荷過程を請け負う産地組織の事業展開,さらに産地のリスク管理などの実態把握にある。 なお,本研究が一般に公開されていない情報に基づき,調査内容が知的財産・知的資産に関わる側面も有することから,現地調査の際に情報収集が予定通りに進まなかったり,協力体制を十分に得られなかったりする状況も想定される。そのため,追跡調査結果や統計分析結果を学会発表や論文にまとめることも考慮するほか,これまでの研究成果を含めて書籍の刊行に向けた準備作業も進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は,現地調査結果の分析と統計データの分析を行ない,学会発表および論文投稿を優先したため,現地調査を実施することができなかった。次年度は,四国地域または九州地域で現地調査を実施する計画であるため,主に旅費として予算を使用したい。
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