研究課題/領域番号 |
17K03253
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤塚 吉浩 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (70274347)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジェントリフィケーション / ツーリズムジェントリフィケーション / インナーシティ / 木造住宅 |
研究実績の概要 |
2019年度は、東京とソウルを対象に、2000年以降のジェントリフィケーションの変化について検討した。 東京の調査では、国勢調査の小地域統計により専門・技術,管理職就業者数の2010年から2015年までの90人以上の増加をジェントリフィケーションの指標としたところ、CBDに近接する中央区、港区、新宿区ではなく、CBDから離れた文京区や豊島区、荒川区、墨田区に増加したところが多い。これらの区には木造住宅密集地域が含まれ、ブルーカラーの割合が高く、インナーシティとしての特徴がある。2000年代には軽工場を兼ねた住宅の跡地である低・未利用地の存在が、ジェントリフィケーションの起因となったが、この傾向は2010年代以降の都心周辺部においてもみられた。 ソウルの調査では、北村におけるツーリズムジェントリフィケーションに関して、次の三点を明らかにした。第一に、北村の嘉會洞は韓屋保存地区に指定されて、建て替えることができない韓屋の多くが老朽化し、地代格差が生じ、ジェントリフィケーションの発現要因となった。第二に、韓屋の修復支援制度により、住宅以外の用途への改修に補助金が出され、ジェントリフィケーションを促進することとなった。第三に、北村の三清洞では商業のジェントリフィケーションが進み地価が急騰して、その影響は嘉會洞にも拡がってきた。北村韓屋村への来訪客の激増は、地域にとって大きな負荷となっており、居場所の立ち退きが起こった。北村修復計画により多くの韓屋が修復されてきたが、北村以外にある多くの韓屋は都市開発のために取り壊されてきた。2008年に韓屋への財政支援の範囲は、仁寺洞、西村、東大門路を対象に拡げられ、2015年にはソウル市全域を対象とすることとなった。これは、将来的にソウル市内の他地区に同様のジェントリフィケーションが起こりうることを示唆しており、どのような影響があるのかについて、さらなる調査研究が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に予定していた、香港とイスタンブールの調査は、香港における暴動による政治情勢の悪化と世界的な感染症拡大により中止せざるを得なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
感染症が収束後には香港とイスタンブールの調査を重点的に行うが、感染症が早くに収束した都市に変更することを視野に入れて研究を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に予定していた、香港とイスタンブールの調査は、香港における暴動による政治情勢の悪化と世界的な感染症拡大により中止せざるを得なかったため、基金の一部を使用できなかった。感染症収束後には、香港とイスタンブールの調査を重点的に行うが、感染症の収束した都市への調査に切り替えることも視野に入れて研究計画をたてている。
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