研究課題/領域番号 |
17K03260
|
研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
季 増民 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (20278237)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 中国 / 郊外地域 / 新住民 / 生活圏 / 再構築 |
研究実績の概要 |
①H29年度は、新住民生活圏存立のメカニズムをより深く掘り下げるため、移出先(本籍地)と、移住先であるK市における「住み分け」や職業(職場)との関連に焦点を当て、居住場所選択の背景及びその変動について探った。 まずは、住宅団地、住宅群、住宅棟といった地域単位に即して、居住者の属性(年齢、性別、職業など)を調べ、それらをつなぎ合わせていって、社区という地域単位における「面的」分布実態を浮かび上がらせる。次に、移出先と、移住先における居住場所の選択とを結びつけて考察することにより、新住民生活空間の構造を立体的に解明した。 出自、職業、文化も多種多様な新住民生活圏を一緒くたではなく、新住民の属性と、受け皿であるローカルな(社区、即ちコミュニティ)ホスト地域社会に固有の特徴と結び付けて考察すると、それぞれの地域性や多様性が浮かび上がってきた。研究成果→移住先における新住民の住み分けに関する地理学的考察―中国Z省K市を事例に-。 ②急速開発下の都市郊外における地域特性を解明するため、2008年11月から2014年5月にかけて6年間計7回、江蘇省昆山開発区で実施したアンケートに基づき、都市周縁部におけるニューカマー生活実態を明らかにした。研究成果→都市周縁部におけるニューカマーの生活実態-江蘇省昆山開発区でのアンケートに基づく考察-。 ③研究成果の一部は、「中国における都市化に伴う郊外地域の変容-実態調査に基づく考察」にまとめ、日本学術会議公開シンポジウム「GLP(全球陸域研究計画)の推進と国連持続可能な開発目標(SDGs)への貢献」で発表した(平成29年10月16日、日本学術会議講堂)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、H29年度では、当初計画に沿って統計データ解析の結果と聞き取り調査に基づき、社区単位における年齢・性別・婚姻・学歴といった基本属性、居住状況・職業・在住期間といった社会・経済属性の変化について分析した また、統計データ解析に加えて、2008年11月から2014年5月にかけて6年間計7回、江蘇省昆山開発区で実施したアンケートを集計、分析し、都市周縁部におけるニューカマー生活実態を明らかにした。その結果は、郊外地域における空間構造や社会構成の解明と将来の予測に活用する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画に沿って、郊外地域社会の再編について、街道と社区のレベルに立って実態解明を進めていく。具体的には、街道という地域単位における新住民の基本属性、社会・経済属性構成の地域特性とその変化を明らかにする。よって新住民生活圏に関する重層的かつ多視角的解明を目指す。分析に当たって、新住民を取り巻く環境、いわゆる外的要因の変化、例えば、マクロ経済の動向、自治体の受け入れ政策、移出先の社会経済環境の変化などを当然なことながら重要視する。一方、新住民自身に発生した、いわゆる内的変化、例えば滞在の長期化、世代交代、子供の就学、地縁・血縁・業縁からの離脱、生活スタイル・社交圏とも関連付けて、外的要因と内的要因を交錯させながら複眼的に考察する。 また、新住民生活圏再構築の実態により踏み込むため、街道から一段を切り下げ、地域階層の最底辺をなす社区とその下位にある住宅団地や住宅に焦点を当てミクロレベルで生活圏の実態を解明しようとする。具体的には、年齢・性別・婚姻といった構成員の属性、職業などの経済背景、学歴などの教育背景、滞在期間や居住種類という定着状態などのアングルから多視角的に考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現地調査対象地域の都合により、一部の現地調査は計画どおり実施することが出来なかった。次年度(30年度)に残金を使用し、調査を行う予定である。
|