研究課題/領域番号 |
17K03260
|
研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
季 増民 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (20278237)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 高度成長期 / 郊外地域 / 空間構造 / 社会構成 / 変貌 / 新興国 / ヤンゴン大都市圏 |
研究実績の概要 |
研究課題である「大規模都市化に伴う郊外地域の変容」の「深まり」と「広がり」の同時達成のため、令和元年度においては、ミャンマーを調査対象に加え、現地調査を実施した。 具体的には、①ヤンゴン郊外の工業団地に進出した日系企業の事業展開とミャンマー人職員の特徴について、現地視察と直接面談によって明らかにした。また、ミャンマー人職員をホワイトカラー(事務職員)とブルーカラー(現場作業員)の2グループに分けて、両者に見られる違いと背景を考察した。②ヤンゴン郊外における中国系縫製会社HANJENMFGの立地背景と今後の展開方針、ヤンゴン郊外に進出した日系や中華系関連企業との生産・物流連携について、聞き取り調査により検討した。③ミャンマー・日本の政府や民間企業から構成されるMJTD(Myanmar Japan Thilawa Development Ltd.)社でのヒアリングや現地視察を踏まえ、ティラワ経済特区(SEZ)における入居企業の事業展開の一端について取りまとめた。④ヤンゴン郊外における工業団地入居企業事業展開について、筆者が30年にわたってアジア地域で考察してきた管見を踏まえ、発展段階や現地化などの特徴について考察した。⑤地域再編の視点に立ち、入居企業と所在地との共生共栄を図り、魅力ある地域形成を推進するには、産業計画と地域計画が一本化した法制度整備の必要性、さらには技術革新の進展に伴うスマートシティの整備などを提言した。
研究成果→ミャンマーにおける外資企業事業展開の地域特性―ヤンゴン大都市圏を事例に
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にそって、上海・ジャカルタ・ヤンゴンなど大都市圏における郊外地域構造の解明を進めた。社会経済と開発政策を共有しないため、大規模都市化に伴い、当然のことながら千差万別な郊外地域像が作り出されている。しかし、ある時間断面や特定場所を切り出して、タイムスリップしながら、パズルのように動かしてみると、各地域の特異性の裏に潜む共通性が浮かび上がる。それぞれの国の事情に基づく「特異性」とともに、時空間を共有しないにもかかわらず、研究対象国に通底する「普遍性」を確認することができた。 これらの結果は、郊外地域における空間構造や社会構成再編の解明と将来の予測に活用する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
ミャンマーで実施してきた一連の調査結果は、「ヤンゴン郊外地域変化研究シリーズ」としてまとめる予定である。第1弾である「高度経済成長期におけるヤンゴン郊外地域構造の変化」は、ヤンゴン郊外地域変化に関する研究成果を取りまとめ、研究を通じて得た知見を提言する。続く「ヤンゴン郊外地域における海外進出企業の事業展開」は、第2弾として先進国日本と新興国中国から、後発国であるミャンマーに進出した企業の事業展開の地域特徴について現地調査に基づいて解明する。本シリーズ関連論文の第3弾として、「海外進出企業従業員の構造とライフデザイン」においては、アンケートと聞き取り調査に基づき、現地採用したミャンマー人従業員の属性構成、工程管理系統、将来のライフデザインなどを浮き彫りにする。第4弾である「海外進出企業の事業展開に伴う異文化のせめぎあい」では、現地法人の日本人管理者、アジア各地を転戦していた日本人商社ビジネスマンなどが実体験した、日本文化と進出先の地付き文化とのクロス詳細な過程について考察する。 上記の研究成果を2022年度まで順次公表する予定である。 なお、持続可能な地域開発を進めるにあたって、農村・都市だけでは担えない役割を常に影に隠れて調整する郊外という「第3地帯」がカナメである。21世紀の最大課題であるSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」を実現するため、本研究成果を活用しつつ、「第3地帯としての郊外地域論」の確立を目指していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現下、急速な大規模都市化による郊外地域変化の結果に着目し、対象地域同士の同一基準による比較検討方法を体系化し、アジア新興国郊外地域の変貌モデル確立を目指している。その過程において、常に実態確認と学術論考とのフィードバックを繰り返す必要がある。現地調査対象者との日程調整、新しい調査項目の設計に時間を要している。また、2020年初頭予定されていた現地調査は、コロナウイルスによる感染拡大のため、中止に追い込まれた。
|