研究実績の概要 |
1960年代日本に始まった高度経済成長の波を追いかけながら、中国やインドネシアを経て東南アジア最西端のミャンマーまで、郊外の土地利用と景観や地域・社会構造の変化を時空間的に考察してきている。30数年にわたる年月と約4,366kmに及ぶ距離、この広大な時空間における調査と検証のフィードバックを繰り返してきた。 このような蓄積を踏まえ、これまでバラバラになっていた断片につながりを与えて、有機的な統一体に結実させていった。 時期的には、経済・社会発展度合いの推移に沿って、先進国、新興国、後発国の順に焦点を当て、どのようにして低迷期から脱出して、高度経済成長期(いわゆる活発期)に突入した後、成熟期に着陸したプロセスを検証する。発展段階ごとに郊外地域に投影された結果を特定し、そのメカニズムを明らかにした。アジア地域の国々における各発展段階の郊外地域変化パターン同士(ターニングポイント、その代表的な事象など)の比較検討を進め、普遍性と地域性を抽出する。ミャンマーの研究を以て研究サイクル完結の到達点とし、「深まり」と「広がり」の同時達成を目指した。 上記の研究活動に並行する形で、近年、筆者の研究活動の出発点(原点)である北関東郊外地域に立ち返って、工業団地造成地域の現状についてもいわゆる原点回帰調査を行っている。即ち、研究方向を反転し、先発国日本の郊外地域が国土開発の中で辿ってきた軌跡を振り返りながら、研究原点に立ち返って成熟・安定期に移行した先進国の郊外地域に求められる新しい機能について考察した。 学術的には、郊外地域研究の集大成として、対象としての「郊外地域」、分析枠組みとしての「郊外地域」という地誌学方法論を再考し、都市と農村に並ぶ郊外モデルの確立を進めてきた。また、研究を通じて地理学的な社会貢献について新たな知見を模索した。
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