研究課題/領域番号 |
17K03262
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
佐々木 高弘 京都学園大学, 人文学部, 教授 (20205850)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 古代景観 / 風土記 / ネットワーク / 言説 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、場所に記憶された、様々な時代の人々の行為が、どのように現在に至るまでの景観に表出しているのかを、古代から現代までの様々な言説資料を使用して、人間と場所の無意識的で深遠な関係を明らかにすることである。 平成30年度においては、東海道・東山道を中心としたネットワーク上の都市、衢の言説を収集しデータベースを作成し、現地調査においては、資料収集、ドローンによる伝承と場所の関係を空撮することであった。これら作業において物品購入費および謝金を使用した。また現地調査においては旅費を使用した。 そこでまずは古代の東海道沿いの古代の伝承として『田村の草子』を取りあげ、田村神社・鈴鹿峠・鈴鹿の関の資料調査および現地調査を行った。田村神社と鈴鹿の関においては、ドローンによる現地の空撮を行い、伝承と周辺地形の関係を把握した。 つぎに古代東海道沿いの伝承として『常陸国風土記』を取りあげ、データベースを作成し、関連の文献も収集した。その上で、本風土記の神話伝承の言説、寺社、都市、自然環境との関係についての現地調査を行った。その際、ドローンでこれらの関係を映像化して確認した。 東山道については言説資料として『玉藻の前』をとりあげ、那須野と白河の関において資料および現地調査を行った。また言説資料として『伊吹童子』をとりあげ伊吹山および不破の関との地理的位置の調査を行った。さらにこれら街道だけで『伊吹童子』との関連から『酒呑童子』との関連性から北陸道の最北に位置する新潟の弥彦山においても資料および現地調査を行った。弥彦山および古代の北陸道の位置関係については、ドローンの撮影も行った。山陽道に関しても「吉備津彦命」の伝承の資料および現地調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究実施計画には、東海道・東山道を中心としたネットワーク上の都市、衢の言説を収集し、現地調査を行う、とあり、特に東海道の『常陸国風土記』のデータベースを作成する予定になっているが、この作業はすでに完了している。 またこれらデータを古代の交通路の地図に照合し、ネットワーク関係を探る点も完了している。『常陸国風土記』は、おおむね古代の交通路が中心地から当該地域に入る郡を中心に記述されており、明らかに古代交通路ネットワークとの関係が見られる。また常陸国の国府は筑波山と恋瀬川、さらに霞ヶ浦を通じて南東方向へ連続する関係が見られる。と同時に近世の水戸城下町においても同様の関係性が見いだせることが明らかとなった。これらの関係性はドローンでの空から映像化で、より明瞭に確認することが出来る点も終了している。このように古代の交通路が伝承、建造物、自然環境などの諸アクターを包含しながら、古代から近世への景観をネットワーク化していることが理解できる。 また東山道に位置する中世の説話群、『伊吹童子』や『玉藻の前』においても古代の交通ネットワークが影響を与えていることが明らかとなった。山陽道の吉備津彦命の言説と鬼ノ城、吉備津彦神社についても上記と同様の作業を行った上で、現地調査を行う点も終了している。この研究においても、古代の交通路ネットワークと国境、関所などとの関係性が中世の新たな伝承を生んだ事例であるが、これらもやはり古代の衢の祭礼である道饗祭との関連性が指摘できるであろう。 さらに現地調査の際、各県立図書館にて資料調査も実施し、現在把握していない言説の収集、あるいは神社等の資料調査も行った。最終的にはこれらを言説資料、地図史料、写真資料、映像資料をデータベース化も行っており、現在までの進捗状況はおおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和1年度の研究実施計画は、西海道・北陸道を中心としたネットワーク上の都市、衢の言説を収集し、現地調査を行う予定である。これらの研究計画を実施する際し、資料収集に関しては物品費、データベース作成については謝金、現地調査については旅費を使用する予定である。 まずは古代の西海道に位置する『豊後国風土記』『肥前国風土記』のデータベースを作成する。データベースの作成には謝金を利用する予定である。その上で、データベースと古代の交通路の関係を地図化し、伝承と交通路のネットワーク関係を探る。ネットワーク関係を抽出した上で、神話伝承、あるいはその後の言説、寺社、都市、自然環境との関係仮説を立てた上で、現地調査を行い。ドローンでこれらの関係を映像化して確認する。 また北陸道においては、近世城下町の民間伝承にも焦点を当てる。またその他の古代の交通路についても民間伝承や御伽草子等にも焦点を当て調査を行う予定である。 さらに『播磨国風土記』に関しては、今年度も随時調査を続行する予定である。 令和1年度は、西海道道・北陸道を中心としたネットワーク上の都市、衢の言説を収集し、上記と同様の現地調査を行い、令和2年度は、南海道を中心としたネットワーク上の都市、衢の言説を収集し、同様の現地調査を行う予定である。
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