今年度は、本科研の最終年度としてニューヨークを調査し、世界都市論の再構築について検討した。 まずニューヨーク調査の結果であるが、この大都市圏は2000年代初頭の世界金融危機を受けて、大きく変化した。ニューヨークの都市政策は今回の金融危機を受けて金融中心主義から、多様な都市開発政策へと変化したようだ。マンハッタンでは、高架鉄道の廃線を利用した保全型の観光開発などが続いている。同時に大きな変化として、金融機能の郊外化現象を指摘できる。マンハッタンに集中していていた金融機能が、地価高騰の影響を受けて郊外化しつつある。金融関係の郊外拠点のひとつは、ニューヨークの都心部から東北方向に位置するコネチカット州グリニッジである。このグリニッジ他を調査した。 次に世界都市論の再構築についての検討であるが、昨年に続いて国家と大都市との関係を再検討した。国家と大都市の関係という点で注目すべき変化はヨーロッパとアジアの双方にあった。ヨーロッパではイギリスがEUから離脱し、これに伴ってロンドンに立地していた金融関係の主要企業がフランクフルトやパリその他の大都市に移動するという変化が続いている。 他方のアジアで注目すべきなのは、香港とジャカルタである。香港は中国に返還された後も一国二制度の下に運営されてきたが、2019年には制度運用を巡って中央政府との間に摩擦が発生した。中国とインドに挟まれる東南アジアでもアセアン共同体を形成して2大国の成長に対抗しようとしている。こうした中で注目すべき大都市は、インドネシアのジャカルタであり、首都機能の移転が決まった。さらに、シンガポールを中核とし、マレーシア・インドネシアとの間に展開している国境を超える都市圏が新しい段階を迎えつつある。
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