2019年度は研究期間の最終年度にあたるため、これまでの調査・研究のうち、いまだ完結していないものについて補遺の調査と考察を重ねて3つの成果を発信するとともに、研究期間終了後の総まとめともいうべき学術書の出版に向けた準備を行なった。 まず、『立命館地理学』第31号に発表した「基地都市コザにおける照屋『黒人街』の商業環境―関連店舗の立地復原から―」では、基地都市の空間編成における大きな特色のひとつ〈消費の人種的空間分化〉について明らかにした。これまでの研究期間で、いわゆる「白人街」の景観・店舗復原を実施してきたことから、本稿では沖縄島最大かつ最も著名な「黒人街」である照屋の商業空間を復原している。具体的には、1970年8月時点で立地した事業所を図と表で復原した。そのうえで、集積の度合いの高い業種の特性について考察をくわえ、空間的な特色を明らかにした。 さらに、『立命館文學』第666号に発表した「基地都市コザにおける歓楽街《八重島》の盛衰」では、米軍統治下の沖縄島に創出された「歓楽街」の特色を、とくに立地に着目して明らかしたうえで、「オフリミッツ」の影響や空間諸関係の変化にともなう地域変容の過程を追跡している。1950年代前半の成立から本土復帰にいたる約20年間の地域変容を通時的に観察しつつ、米軍統治下にあって米軍関係者を客とする商業/空間に作用するポリティクスのありように留意して脱商業化の進んだ過程を詳述した。 そして、『変容する都市のゆくえ 複眼の都市論』に寄稿した「コザの無意識-基地都市における〈まちづくり〉の系譜」は、上記、2点目の問題関心を引き継ぎつつ基地都市における本土復帰後の〈まちづくり〉の特色を明らかにした。 なお、これまでの研究成果を総括すべく、学術書出版の準備に向けて、これまで発表した成果全体のまとめも行なっている。
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