研究課題/領域番号 |
17K03271
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
加藤 睦 (山口睦) 山口大学, 人文学部, 准教授 (70547702)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 災害支援 / 贈与 / 東日本大震災 / 地域間贈与 |
研究実績の概要 |
災害支援と地域間贈与について検討するために、神戸の被災地NGO協働センターについて調査を行った。阪神淡路大震災を契機として結成された当該団体は、被災者の災害関連死、仮設住宅等での孤独死を防ぐために、まけないぞう事業を開始した。1本のタオル運動として、各地から寄付されたタオルを被災者に加工してもらい、象の形にし、商品として販売する。象は、300円から500円で売られ、被災者には手間賃として100円が支払われる。本業に復帰するまでのつなぎの内職として、また女性たちにとっては、生きがいとして活動に参加した。現在でも神戸において2名の女性たちがまけないぞうを作り続けている。 東日本大震災の被災地においてもまけないぞう事業が2011年3月から展開されており、2018年においても50名程度の作り手がいる。2011年度は、岩手県釜石市、大船渡市、陸前高田市、大槌町、宮城県気仙沼市で講習会を行った。出荷実績は、37,662頭、まけないぞう事業収入は、20,736,405円である。2017年は、まけないぞう事業が継続20周年であり、全国各地をキャラバンした。累計27万頭を出荷している。 東日本大震災において、神戸からの支援は大きなものがあった。かつて支援を受けた側が、次なる災害において支援者となる、地域間贈与の事例といえる。今後、さらに神戸生協、他のNPO団体などへの調査を行い、事例を積み重ねる予定である。 東日本大震災と阪神淡路大震災、熊本地震における手作り復興商品の比較研究を行った。これらの商品が販売される商品領域として、①復興商品、②みやげ物、③普遍的商品を設定した。これらの商品領域は、①応援消費、②復興ツーリズム、③一般的消費という行為と対応している。①、②の領域は時間の経過とともに縮小し、手作り復興商品は、③への移行を余儀なくされるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題の1つである国内における災害支援と地域間贈与について調査、研究を行った。国内調査が長引いたため、国外における災害支援の事例検討の準備ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、神戸における東日本大震災の被災地への支援について、さらに事例を積み重ねる。3つの被災地(阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震)における事例について、論文作成を行う。また、国境を越えた災害支援として、アメリカの青少年赤十字の調査にむけた準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたアメリカ青少年赤十字の調査にむけた準備が進まなかったため、次年度使用額が生じた。国内の地域間贈与の事例についての調査が長引いたためである。2018年度は、アメリカの青少年赤十字の調査にむけて、日本赤十字社の資料を調査し、当時の事業の詳細を調べる。さらに、ワシントンDCのJRC(Junior Red Cross)での調査を行う。
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