研究課題/領域番号 |
17K03271
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山口 睦 山口大学, 人文学部, 准教授 (70547702)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 災害支援 / 贈与 / 青少年赤十字 / 復興ビジネス |
研究実績の概要 |
2019年度は、国外における災害支援と地域間贈与について調査、研究を進めた。第一に、日本赤十字社への調査を8月に行った。NPO団体AARJapan(日本難民を救う会)では、1992年に内戦終了直後のカンボジアの子どもたちへ支援物資を贈る「愛のポシェット運動」を展開した。全国に呼びかけ、布製の巾着に文房具や日用品を詰めて贈るというもので、これのヒントとなったのは、同会代表が実際に受け取った、戦後アメリカの青少年赤十字から日本の児童に贈られた「ギフトボックス」だったという。このギフトボックスについて、日本赤十字社が保存している広報誌『青少年赤十字』(1949~1971)の調査、分析を行った。海外の青少年赤十字との通信のやりとり、アメリカ青少年赤十字からのギフトボックス、スクールチェストなどの贈与、日本の青少年赤十字から海外への贈与などが事例として得られた。成果としては、アメリカ青少年赤十字が支援の中心的役割を果たしていたこと、戦災支援が一段落したのちは、自然災害支援が行われていたこと、国際交流を目的として行われていたことがわかった。2020年度に学会発表、成果論文を投稿する予定である。 また、海外災害被災地における復興ビジネスについて、8月に台湾における現地調査を行った。台湾高雄市甲仙区に位置する小林村は、2009年8月に台風による土砂崩れで集落が埋没した。先住民である平埔族の民族文化である刺繍が行政の支援により復興している。災害と平埔族の民族文化についての博物館が建設されている。また、台中市霧峰区には1999年9月に発生した921地震の震災遺構として921教育園区があり、資料調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度末にcovid-19のために調査ができなかったため遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
東京婦人連合会会報『連合婦人』の分析、日本キリスト教婦人矯風会会報『婦人新報』の分析を進める。東京婦人連合会(1928年~1942年)は、日本キリスト教婦人矯風会が中心となり、関東大震災時(1923年9月)に結成された。被災した母親たちにミルクを配るという活動から始まる。同連合会は、関東大震災時に吉原などの遊郭で 1 千人に及ぶ娼妓が犠牲になったことから、公娼廃止運動を展開していく。会報『連合婦人』は、1928 年~1942 年まで刊行された。日本キリスト教婦人矯風会は、1870 年代アメリカで禁酒運動を展開していたプロテスタント系の禁酒運動婦人団体「女性キリスト教禁酒連合」の日本支部として、矢嶋楫子が1887 年に組織した。会報『婦人新報』は、1888年から発行されており、最も古い災害支援活動としては1891年尾濃地震がある。 また、2019年度の成果を踏まえて、アメリカ青少年赤十字についての予備調査を行う。ギフトボックス、スクールチェストなどがどのようなプロセスで世界中に贈られるようになったのか、資料の所蔵、調査対象者の特定などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外における災害支援と地域間贈与についての調査が計画の一部しか行えず、調査費用の一部が未使用となった。また、国際学会での発表も行えなかったため海外渡航費用が未使用となった。次年度において上記を実施する予定である。
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