研究課題/領域番号 |
17K03274
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
兒玉 香菜子 (児玉香菜子) 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20465933)
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研究期間 (年度) |
2018-02-28 – 2022-03-31
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キーワード | モンゴル / 牧畜民 / 女性 / 都市 / 民族教育 / 中国 / オーラルヒストリー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は中国社会主義集団経済と社会主義市場経済化を経験してきたモンゴル牧畜民女性の都市進出過程と都市での生活経験を、オーラルヒストリーにより具体的に明らかにすることである。 研究初年度は、年次計画に従い、中国北京市および内モンゴル自治区にて研究協力者である中央民族大学のサランゲレル教授とともにオーラルヒストリーの収集をおこなった。オーラルヒストリーの対象としたのは地方から北京市、フフホト市に生活拠点を移したモンゴル牧畜民女性たちである。具体的には政府関係者、自治体職員、教育研究機関、民族企業などに大都市に職を得た女性たちや自営業者などで、都市進出過程の多様性が明らかになった。まず、都市進出の背景には自身の就職だけでなく、第1次産業に対する否定、進学とその結果による都市への就職、都市居住男性との結婚などがあることである。とりわけ都市男性との結婚の背景には都市男性の地方への転勤や下放など1950年代後半からの政治運動など時代性が大きい。くわえて、都市進出にあたり、家族状況や親族の助けなども重要であった。次に、都市生活における大きな変化の一つに子どもの言語の漢語習得がある。漢語が選択されていた理由の一つとして、都市での子どもの保育環境にあることが明らかになった。同時に、関連する行政関連および統計資料、文献資料を取集した。都市女性の生活経験の解明にあたり、北京市やフフホト市の都市近現代史についての知見が必要である。そのため、モンゴル歴史研究者であるペンシルベニア大学アトウッド教授に研究協力者として新たに加わっていただいた。オーラルヒストリーのテープ起こしおよび翻訳作業のため、サランゲレル教授を日本に招聘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画に従って現地調査および文献資料を実施した。 現地調査においてさまざまな出身地域、職業をもつ都市在住女性からオーラルヒストリーを詳細に聞くことができた。出身地域は内モンゴル北部、東北部、西部、さらに新疆ウイグル自治区と多岐にわたる。職業は政府・行政機関、研究教育機関、民族企業、自営業などである。多様な都市進出過程や都市生活での子どもの教育過程などが明らかになった。収集したオーラルヒストリーの公開にむけてテープ起こしと翻訳作業を順調に進めることができた。その成果の一部「都市在住モンゴル人女性のオーラルヒストリー(1)ダリマ」『千葉大学ユーラシア言語文化論集』(20号、2018年)を発表した。都市形成、とくにフフホト市の都市形成過程や民族教育についての資料を集めることが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も現地調査および文献資料収集を進める。現地調査でさらにオーラルヒストリーの収集に取り組む。その際に、民族教育、コミュニティ、家族関係について焦点をあてて聞き取りをおこなう。文献資料収集においては制度関係資料、都市形成過程、民族教育、さらにモンゴル族コミュニティや教育機関について重点的に資料を収集したい。継続して、収集したオーラルヒストリーの公開にむけたテープ起こしと翻訳作業を進めるとともに、資料の整理分析を進める。
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備考 |
児玉香菜子「中国内モンゴル西部荒漠地域におけるラクダ利用変化とその背景」第2回中央アジア牧畜社会研究会, 2018年12月22日,千葉大学
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