研究課題/領域番号 |
17K03274
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
兒玉 香菜子 (児玉香菜子) 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20465933)
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研究期間 (年度) |
2018-02-28 – 2024-03-31
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キーワード | モンゴル / オーラルヒストリー / 女性 / 都市 / 教育 / 中国 / 社会主義 / 人民公社 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は中国社会主義集団経済と社会主義市場経済化を経験してきたモンゴル牧畜民女性の都市進出過程と都市での生活経験を、オーラルヒストリーにより具体的に明らかにすることである。 これまで聞き取りしたフフホト在住の女性たち都市進出過程と生活変化をモンゴル国との比較から考察した(日本モンゴル学会にて研究発表)。モンゴル人女性のフフホト市進出背景にはまず夫のフフホト市への転勤、就労がある。自身による進学、就労は60代の女性にのみ見られるものであった。この年代による違いの背景にあるのは文化大革命による教育の中断、進学断念、大学受験の停止、下放などである。育児においては、地方に暮らす家族の支援を受けるのではなく、職場が提供する幼稚園が大きな役割を果たしていた。子どもの教育言語選択においては漢族とモンゴル族との人口比にかかわらずフフホト市においてモンゴル語による教育機関は限られていたことから、中国語を選択せざるを得ず、第2世代の母語は多くが中国語になっている。フフホト市では住居は就労先から提供されるため、地縁や血縁による空間的コミュニティは形成されにくかった。他方で、フフホト市に進学してきた親族を受け入れる事例がみられた。 本年度もこれまでにおこなったオーラルヒストリーのテープ起こしおよび翻訳作業を継続して実施した。その成果の一部「都市在住モンゴル人女性のオーラルヒストリー(5)ツァヤンジ」を『千葉大学ユーラシア言語文化論集』(24号、2022年)にて発表した。ツァヤンジ女史はフフノール(青海)省の小都市デルヒー市在住で、都市移住の契機は教育と結婚であった。 複数の研究者と「コロナ禍のフィールドワークと海外研修」という特集を組み、コロナ禍で実施されたフィールドワークと海外研修について記録という観点で報告をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究成果を学会発表するとともに、資料公開を進めた。とはいえ、COVID-19の世界的な流行の中、中国は入国後に長期の待機期間を設けていたことに加え、厳しいゼロコロナ政策とその後の感染爆発により、中国の共同研究者も国内での移動が大きく制限され、当該研究に必要な新規の聞き取りはもとより、再度の聞き取り調査が思うように進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
オーラルヒストリーのテープ起こしおよび日本語、英語翻訳作業を継続して進める。必要な再度の聞き取り調査については現地調査を再開するとともに、共同研究者である中央民族大学サランゲレル教授を招へいして、オーラルヒストリー公開への準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度も、新型コロナウイルス感染拡大と中国のゼロコロナ政策及びその後の感染爆発により、フィールドワークが一切実施できない状況であった。現在は入国後の隔離政策も撤廃され、国内移動制限もなくなったため、今年度はフィールドワークを再開するとともに、共同研究者であるサランゲレル教授を日本を招へいし、研究成果の出版公開に取り組む。
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