研究課題/領域番号 |
17K03284
|
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
新本 万里子 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 外来研究員 (60634219)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 生理用品 / 月経 / ケガレ / 羞恥心 / 衛生 / 保健 / パプアニューギニア / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究は、生理用品の受容による月経のケガレ観の変容を、ジェンダーの視点から文化人類学的に考察することを目的としている。 平成30年度は、パプアニューギニアの農村部と都市部において、生理用品へのアクセスと学校教育の影響、NGOによる衛生指導に関する調査を行った。また、首都ポートモレスビーでは、生理用品のほか、生理用品の宣伝媒体となっている雑誌、新聞、薬局のチラシ、ポースター等を収集した。平成30年度の研究実施計画では、生理用品を供給する企業によるイメージ戦略についても研究する予定だったが、調査の結果、パプアニューギニア国内で販売されている生理用品は、現在のところすべて輸入品であり、輸入品を販売している業者による販売活動において、生理用品に関するイメージ戦略には力が入れられてはいないと考えられた。また、農村部では雑誌等が流通していないこともあり、月経にまつわる文化的側面への影響は、現時点では、宣伝活動による企業のイメージ戦略よりも、むしろ実質的な生理用品の流通や、学校とNGOによる衛生教育が関わっていると考えられた。日本など先進国では、企業によるイメージ戦略が月経にまつわるイメージの転換に果たした役割が大きかったことと比べると、月経にまつわる慣習に影響を及ぼす要因の違いとして比較しうる資料となったと考えられる。東セピック州の調査地については月経にまつわる既存の社会的慣習についての調査をほぼ終えており、生理用品が普及し衛生教育が行われているという現在的な状況のもとでの、月経をめぐる女性たちの対応を明らかにできると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東セピック州と首都で生活する女性たちの、生理用品の流入や衛生教育に対する対応については研究実施計画に記入した調査をほぼ終えており、おおむね順調に進展していると考えている。ただし、東部高地州での調査が不十分であり、次年度、資料を補充したいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
資料収集がまだ十分とはいえない東部高地州で調査を実施し、当該地域における生理用品の普及の状況と月経をめぐる慣習について資料を補充する。また、生理用品を輸入し販売している企業にアクセスし、生理用品を販売する上で何らかのイメージを流布しようとする意図はあるのかないのか、パプアニューギニアで生理用品を販売する上での苦労や工夫はあるのかなどについても聞き取りを行う。 次年度は本研究の最終実施年度であり、学会発表や雑誌論文を通して研究成果を公表していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、当初3週間の調査を計画し、東セピック州、州都への旅費のほか、東部高地州への旅費を見込んでいた。しかし、調査期間を2週間しか確保できず、東部高地州に行くことができなかった。次年度は東部高地州へ行き、本年度収集するはずだった情報を収集することで使用したい。また、次年度は最終年度であり成果発表に重点を置くことから、英文校正費などでも使用できると考えられる。
|