今年度は、新型コロナ感染拡大による延長申請をしてから3年目の年であり、最終年度であった。幸い海外での調査が可能になり、補足調査を実施した。補足調査では、調査地であるパプアニューギニアにおいて、皮下インプラントによる避妊法が実施されて始めていることを確認した。また、女性たちが皮下インプラントの使用を選択し、月経のコントロールを始めていることを知ることができた。 本研究は、生理用品というモノと身体との関係やケガレ観の変容を捉えようとしたものである。本科研によって、調査地の女性たちが使用してきた生理用品の変遷を捉えることができた。月経小屋が存在した当時、月経に関する知識を女性たちが共有していたこと、また、月経期間の女性が社会的に可視化された存在であったことを明らかにすることができた。さらに、下着(パンツ)と生理用ナプキンの使用によって、月経が社会的に不可視なものになったこと、月経が女性個人のものになったことを明らかにすることができた。この変化の過程において、月経をめぐる教育にたずさわる人や知識の質も変化していることを明らかにした。 生理用品の変遷と女性の身体観の変容については、日本熱帯生態学会第32回年次大会で口頭発表を行った。月経をめぐる教育と知識の質の変化については、日本文化人類学会第56回研究大会のほか、アメリカ人類学会でも発表を行った。このほか、途上国における月経衛生対処という開発プログラムとローカルな月経対処について、杉田映理(大阪大学)とともに編著書を出版した。
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