研究課題/領域番号 |
17K03285
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
長坂 格 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (60314449)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 男性性 / 再生産の国際分業 / グローバルなケアの連鎖 / 家事労働者 / ヘルスワーカー / 国際移住 / トランスナショナリズム / ジェンダー |
研究実績の概要 |
今年度は、まず2018年3月に実施した、イタリアのフィリピン系家事労働者の就業経験理解、および自己意識の再構築に関する調査で得られた資料のまとめと分析をおこなった。その成果の一部は、7月の第24回フィリピン研究会全国フォーラムで発表された。発表では、男性移住家事労働者たちの就業経験理解と自己の再構築の多様なプロセスを捉えるためのトランスナショナルな視角の重要性、またジェンダーを関係性のもとに捉えるための、再生産労働の国際分業における男性移住者の調査の必要性を指摘した。この発表草稿をもとにした日本語論文は、共著書にて2020年度に公刊される予定である。 その後、2017年、2018年に実施された、イギリスの男性看護師や介護士に関する調査で得られた資料を、イタリアの男性家事労働者に関する調査の結果と比較する作業を行った。その成果の一部は、2月に韓国の国立釜慶大学で開催された第7回環太平洋国際会議で発表された。イタリアとイギリスの移民レジームの違いが、フィリピンから両国への移住者の選別過程、および移住先社会への包摂過程を全く異なるものにしていること、その結果、イタリアの男性移住家事労働者たちの間で色濃く見られた「男性性」に関わると考えられる諸実践や語りが、特にイギリスの男性看護師たちの間では前景化しないことを明らかにし、「再生産労働の国際分業」の展開のなかで移動する人々についての、より関係論的なアプローチの必要性を指摘した。3月には、看護師、介護士の送出国であるフィリピンでの現地調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染の拡大状況に鑑み、調査を中止した。調査中止に伴い、研究期間を1年間延長することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染の拡大状況をふまえ、2020年3月に予定されていたフィリピン調査を延期したため。
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今後の研究の推進方策 |
海外渡航が困難となっているため、イタリアとイギリスにおけるこれまでの調査で得られた資料を用いて分析を行うとともに、可能な限り、新型コロナウィルス感染拡大の影響についても情報を収集をし、何等かの形での公表をおこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染の拡大を踏まえ、2020年3月に予定されていたフィリピン調査を中止したため。2020年度の現地調査実施は困難であることが予想されるため、研究費は、これまでのイタリアとイギリス調査で得た資料を整理し、分析するための経費と、何等かの形での、現状についての聞き取りに要する経費に充てる計画である。
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