研究課題/領域番号 |
17K03286
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
村上 和弘 愛媛大学, 国際連携推進機構, 教授 (40363262)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 対馬 / 日韓交流 / 生活史 |
研究実績の概要 |
本研究課題は「交通と交流」をキーワードに、近現代対馬における生活実態の解明を図ろうとするものである。そのためには、今日の対馬が有している「国境の島・日韓交流の島」というイメージの成立経緯や展開状況への把握は欠かせない。とりわけ1980年に対馬・厳原で始まり、今日、全国各地で実施されるようになった「通信使行列」パレードは重要である。 以上の問題意識に基づき、例年同様、2018年8月には対馬・厳原で開催される「対馬厳原港祭り」および「朝鮮通信使行列」の参与観察調査を実施したほか、現時点の交流状況の把握、および生活史次元での島外・島内交通の変遷に関する聞き取り調査等を行った。また、2018年11月には、山口県上関町にて開催された「朝鮮通信使縁地連絡協議会」(通称「縁地連」)総会および関連行事である「朝鮮通信使行列パレード」等の参与観察調査を実施した。なお、縁地連は「朝鮮通信使に関する記録」のユネスコ「世界の記憶」(2017年10月登録)の日本側申請主体でもある。 これらの調査を通じ、対馬における日韓交流の現状把握、そして、今日、対馬のみならず広く日韓交流・日韓親善の象徴的存在となっている「朝鮮通信使」の今日的な活用状況に関し、「朝鮮通信使行列」パレードの展開状況等を含めてのデータを集積した。 以上の調査から得られたデータおよび本研究課題採択以前から蓄積してきたデータに基づき、学会発表(国際大会1、地方大会1)を行ったほか、共著1冊、論文1編を刊行した。 また、より広い視座から「国境の島・対馬」の状況を考察するための一助として、2019年3月上旬には小笠原村(父島)にて国境離島の現在を中心とした予備的調査を実施し、また、同月下旬には台湾・高雄にて日本統治時代についての歴史叙述を中心とした予備的調査を実施した(台湾調査は他経費との合算による)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年10月に「朝鮮通信使に関する記録物」がユネスコ「世界の記憶」に登録されたことを受け、また、学的関心の広がりを受けて調査計画を若干修正し、対馬以外の国境離島における概況把握および日韓以外の地域における概況把握を行った。このため、対馬島内調査の比重は若干低下したが、全般的には概ね研究計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の遂行に際しては現地調査の実施が不可欠である。その際、現地関係者との信頼関係の構築および維持が重要な鍵となる。現在進行形の動きのため資料の多くは必ずしも活字化されておらず、また、「国境離島における国際交流」についての語りは、それ自体が社会的・政治的影響をもたらしうるためである。そこで機会を捉えて現地を訪問し、直接、各種の活動状況を観察・記録するとともに現地関係者との対面機会を増やし、信頼関係の構築・維持を図る必要があると考えている。 一方で、戦後の交流実態については丹念に新聞(地方面)等の掲載記事を集めることで資料の蓄積を進める所存である。 また、現地調査の過程を通じ、複数のインフォーマントから当時の写真ネガの貸与を受けた。本年度中にネガフィルムのデジタルスキャンを実施し、資料の蓄積を図る所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が288,317円生じたが、これは2019年3月期の調査計画を変更したためである。この次年度使用額は、現地関係者より提供を受けた古写真ネガフィルムのデジタルスキャンおよび各種調査の充実に充てる所存である。
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