平成30年度は山口県防府市などでの調査を予定していたが、前年度に予定していた福井県小浜市および滋賀県東近江市などによる調査において新たな課題を見いだしたこともあって、そちらの調査を継続することになり、山口県などにおける調査は文献調査にとどまった。福井県小浜市では、集落レベルでの共有地を当屋制によって耕作する事例を見いだし、また神社祭祀における当屋制と女性祭祀との関連を明らかにするなど大きな成果を得たので、日本民俗学会年会(10月・駒澤大学)で口頭発表し、その後「若狭漁村における女性祭祀と村落組織」(3月・『人間文化』46号)を発表した。これらの研究において男性中心の当屋制度と女性組織との関連を明らかにすることができた。また若狭地方では若狭町久々子や神子などでも現地調査を実施し、神社当屋制に関する事例を集めることができた。さらには31年度に予定していた東近江市伊庭などでも調査を実施した。 その他、当屋制データベースを充実させるため関西大学図書館、国立国会図書館、都立中央図書館などで文献調査を実施し、多くの当屋制の事例を見いだした。ことに三重県下において神社祭祀組織と山林利用に関する多くの事例を見いだしたのは大きな成果であった。これらの成果は31年度のフィールドワークに活用する予定である。
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