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2018 年度 実施状況報告書

多民族国家におけるナショナリティとエスニシティの構築―マレーシアのインド系移民

研究課題

研究課題/領域番号 17K03293
研究機関開智国際大学

研究代表者

古賀 万由里  開智国際大学, 国際教養学部, 講師 (20782345)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードヒンドゥー寺院 / タミル語学校 / NGO団体 / ヒンドゥー資産管理委員会 / 開発
研究実績の概要

2018年11月に暴動が起き、社会的問題となったヒンドゥー寺院の暴動の真相と原因について、主司祭や寺院関係者らに聞き取り調査を行った結果、寺院管理委員会内の対立に開発業者や政治家が関与して事態が複雑化し、暴動に発展したことが判明した。セランゴールン州においては2000年代から開発業者によるヒンドゥー寺院の取り壊しが相次ぎ、寺院側との衝突が絶えなかったが、ペナン州ではヒンドゥー資産委員会がヒンドゥー教徒の寺院をはじめ墓地や土地を管理しており、開発側と寺院側の間に入って穏便に争いを解決していることが、ヒンドゥー資産委員会長や局長への聞き取り調査により明らかになった。
エステートにあるタミル語の小学校は、マレー語学校や中国語学校に比べ質が低いと言われているが、セランゴール州のエステートにあるタミル語学校では、PTAやNGOの協力を得て、貧しい家庭の子供に本の贈呈や学校への送り迎えを無料で行うことにより、生徒やその過程に満足度の高い教育とサービスを可能にしていることが校長へのインタビューにより分かった。
ヒンドゥー教徒の貧困問題に取り組んでいると言われている、社会党のインド系議員やヒンドゥー教徒のNGO団体にインタビューしたところ、民族問題は政治的に利用されており、貧困層の多くはマレー人であり、インド系やマレー人の区別なく問題に取り組もうとしている団体の動きがあること分かった。一方でヒンドゥーの宗教団体では、食事などの援助は全宗教の人を対象としているが、ムスリムは敷地内に入れないなど(法で非ムスリムがムスリムを改宗させるのが禁じられているため)、イスラム国家に対する配慮が見られる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒンドゥー寺院とタミル語学校、およびNGOの活動については調査することができたが、無国籍の人々への調査は断念した。なぜなら、無国籍の人は警察に見つかると捕まるため、人目を避けて社会の周縁で生活しており、調査に対して警戒心が強いのと、また万が一彼らの情報が警察にいけば、彼らの身が捕らわれるからである。

今後の研究の推進方策

ヒンドゥー寺院と開発の対立やタミル語学校の教育内容や質、存在意義については、イスラーム国家における宗教および言語マイノリティの立場などから議論されるが、主体がマジョリテがマイノリティかによって考え方が異なってくる。「公正」とは何かを問うた場合、答えは容易には出ないのだが、問題が生じている現場での調査を続けることにより、多民族国家のエスニシティとナショナリティの問題の根源と複雑性についてさらに追及していく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 開発に抗する宗教―マレーシアのヒンドゥー教をめぐる事例から2019

    • 著者名/発表者名
      古賀万由里
    • 雑誌名

      宗教と社会

      巻: 25 ページ: 校正中

  • [学会発表] マイノリティの宗教施設をめぐる問題―マレーシアにおける開発とヒンドゥー寺院2018

    • 著者名/発表者名
      古賀万由里
    • 学会等名
      第26回「宗教と社会」学会
  • [学会発表] Struggle for the Right of Hindu Temples in Malaysia2018

    • 著者名/発表者名
      Mayuri Koga
    • 学会等名
      Malaysian Studies Conference
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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